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ヤマト航海日誌

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2016.2.14 トーク・アバウト・ザ・ロング・スタッフ



『アルマゲドン』という映画は、シャープ大佐がいなければとても見れたものではない。1999年の正月、映画館であれを見ながらこれは一体なんなんだとおれは思いっぱなしだった。『ラヂオの時間』という映画を少し前にビデオで見ていた。

これってまるであの映画の中のラジオドラマじゃねえか? 話の始めのところでは浜の漁師かなんかだったような連中が、次々にわけのわからんことが起きていつの間にか宇宙飛行士になっている。事故に遭ってもう地球には帰れない、となるけれど、そこで突然、それまでは「画面の端に変に目立つエキストラがいるけどあれはなんだろう」という感じだったシャープ大佐が場をさらってご飯をドカドカと丼に盛る。そのあまりのカッコよさに、ジャンクフードとわかっていても腹がパンパンになるまで食べさせられてしまうのだ。

そんなふうに考えるのはおれだけかと思っていたら、当時やっぱり似たようなことを言った人がいるという話が最近読んだ何かの本に書いてあった。なんだったかな……〈シャープ大佐の人〉は次の『パーフェクト・ストーム』で浜の漁師になっていた。

そうだ、ドナルド・マクドナルド……じゃねえな。ええとなんだったっけ。テーブルトークRPGリプレイか。世の中にそういうものがあってヲタクが好むという話を、知識としておれは知りつつ現物を見たことがないのだが、だいたいこれと似たようなものと思っていいのか? 出渕裕がエロ同人誌仲間と集まって、「今日は『ヤマト』でTRPGやろうぜ。〈ヤマト〉が宇宙サルガッソーに入って出られなくなるんだ」と言う。『2199』をおれが途中で見るのをやめつつ、〈サルガッソー〉の回だけを後から見た話を前に書いたけど(なぜあの話だけ後から見たかの理由は『ミンキーモモをリメイクする』の回に付記で加えておいたので、すみませんが戻って読んでおいてください)、あれを見たとき思ったのが「これはシャープ大佐のいない『アルマゲドン』だな」ということである。ドナルド・マクドナルドのいない『ラヂオの時間』だ。見ながら「うおお」と燃えさせてくれるキャラクターが存在しない。だからとにかく、ただ話がメチャクチャなだけで、おもしろくもなんともない。

何人かバカな人間が集まって、〈グリコの社長を誘拐したらどうなるか〉なんてテーマでお話をこしらえようと考える。全員が『ザ・ロック』な映画を見過ぎたやつらであり、自分の好きな要素ばかり盛り込もうとするものだから、スジはデタラメで思いもしない方向へ転がるだけ転がってしまう。なのに夢中で盛り上がっているものだからものすごい感動作を作ったつもり。あるまげドーンな結末に、まぶたの裏に打ち上げ花火が見えてしまう。

けれど何も知らない者が後からスジを追おうとしても〈ゴルディオンの結び目〉だ。一体全体、この不可解な事件はなんだ? 「『バッドボーイズ』おもろいでえ」って、この言葉にはどんな意味があるというんだ?

まあ、いつかの〈小説〉は思いつきでちょっと書いてみただけで、あれが真相に違いないと言うつもりはないんですが、しかし人とはこういうものよ。こういうことがある生き物よ。こんな内輪のお祭り騒ぎを外でフォローし過剰に反応するやつがいて、「うおおおんっ!」と泣いて感動しちゃったりする。流れ星の荒くれトラック・ドライバーが、車体全面を萌え画で埋めた痛コンボイ〈ミレニアム・ロリコン号〉でジョン・ウィリアムスな曲を鳴らしてやってきて叫ぶのだ。「出渕先生、宇宙サルガッソー、最高でした! よかったよお! よかったよほおうっっっ!」

凄いよねえ。ディープ・インパクトだよね。チューバッカの雄叫びを出渕裕が〈正しい評価〉と勘違いして受け取るのも無理はないと思えるよね。本当の正しい評価は「何が感動作だバーカ。とんだ〈電波の時間〉じゃねえか」なんだと言っても耳に入るはずがないよね。

『アルマゲドン』にはシャープ大佐が出てくるからいいよねえ。『実写ヤマト』にシャープ大佐はいないよねえ。エアロスミスが「おぼえてい〜ます〜か〜、麦わら帽子を〜、それは初めての〜、米(ベイ)の屈辱でした〜、トラトラフォーマ〜」と歌ってもぜんぜん胸が熱くならない。『2199』も変な黄色の相原あたりをグレーでシャープなスレッガー野郎に変えて古代の頬をバチーンと叩かせ、「オヤジにもぶたれたことないのに!」「気合の問題なんだ!」とやればちっとは見れるものになるかもしれんが、CMでソレイホ刑事が巻紙広げて『哀しいけど、これ、テーブルトーク・リプレイです。』。キモヲタの〈話し合い〉で作ってるから話が〈サイド6(シックス)〉なのよね。

スレッガーのいない〈サイド6〉……古代がカムラン・ブルームなエリート気取り野郎になって、女の前でカッコつけて「アナタのための骨折りなら、ボクはどんなことだって……」なんてことを言う。で、島から「ヤなやつ。お前、口だけで、自分じゃなんにもしないじゃないか。侵略を自分と関係ないことと思ってるだろ」なんて言われても「心外だな」のひとことで終わり。

〈マトモな意見〉は耳に入らないんですな。沖田といえば艦長室で「わかるぞ。最後は都合のいいことがドドンと起きて〈ヤマト〉が勝つのだ。ワシはかしこいなあ」なんて言ってると。誰かこの連中の頬をバチンとやってくれよお。

でもスレッガーはいないのだ。嘘って……嘘だって言えないの……テレビ番組を勝手にアップロードするのは違法よ! ソレイホ刑事が言ってるでしょう。見るのも悪いの。いちばん悪いの。流す者より見る者の方を取り締まらなきゃいけないの。あれは公共広告なのよ。なのにアナタはお役所の仕事が間違いと言うの?

ええ、そうです、ミライさん。あなたもまだその歳で、『2199』の新見みたいにオバサン扱いされてますけど、それも間違いと思います。役人にはそもそもまともな仕事なんかできません。連中に〈ライト・スタッフ〉を期待するのが間違ってます。

やつらはカムラン・ブルームだから、長い紙を見せつけて「これを破ったらペナルティ。どんな言い分も聞きません。」と言えばなんでも物事が自分達に都合のいいよういくと思ってるんでしょう。どうしようもねえバカ。

麻薬や売春やエロ同人誌は、前回も書いたように買う方もまた確かに悪い行為ですが、インターネットで無料で見てしまえるものを『見る者の方がより悪い』というのはカムラン野郎が寝言をほざいているだけです。この問題に関する限り、見る者は何も悪くありません。一切、少しも、なんにも悪くありません。

悪いのは違法アップローダーだけ。違法と知りつつネットにものを流している者だけです。見る側を取り締まる法律などは絶対に作ってはならない。

その法律を作ることは、〈どくさいスイッチ〉を作ることになるでしょう。警察はあらゆる家に令状なしで踏み込んで、家宅捜索できるようになるでしょう。「違法なものを見てないか調べる」と言ってあなたのPCを持っていけるようになるのです。

できるものなら〈カムラン〉は、もちろんそうしたいでしょう。でもまあ、心配しなくても、まずできっこないですが。山本太郎が首相にでもならない限り、〈ぶっちゃん古代〉な白蟻エリートの望みがかなうことはありません。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之