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ヤマト航海日誌

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2017.8.10 ドラマティック・ワールド



前回、なんにも書くことがないから『ない』とここに書いたが、不思議と出来るものである。いやね、『ジュラシック・ワールド』をね、テレビで見たのよ。この間、地上波で初放映したでしょう。あの映画、おれはこれまで興味がなくて、あの放送でやっと初めて見たんだけどさ。

この日誌をずっと読んでいるならばたぶん気づいていると思うが、おれはケーブルTVの契約をしてから、映画館で映画を一本も見てないし、レンタルでも借りてない。ハードディスクに録っておき、アタマの十五分ばかり見て、つまらなければそこで消す。最後まで見る映画など、月に三本あるかどうかだ。この六年はずっとそうです。

で、『ジュラシック・ワールド』は……なんでえこりゃあと思いながらも珍しくまあ最後まで見るには見たけど、なんでえありゃあ。あんなもんを不覚にも最後まで見てしまって悔しいからここに書こうという話ですわ。もちろん『ヤマト』となんの関係もありません。

公開当時に見た人の評価もおれは知らないのだが、たぶんやっぱりおれが感じたのと同じ意見が多かったんじゃねえかな。『これは映画じゃない。ドラマだ』と。何から何までテレビドラマのメソッドで作られている映画だ、と。

ねえ、そうでしょう。おれは見ながらずっと思いっぱなしだったもん。これってほんとは全部で二十四時間のシーズンドラマとして企画したものが、制作費が莫大になるとわかって二時間に詰めたものなんちゃうんかい、と。

登場人物がやたらと多く、主役が誰かわからない。ひとりひとりのお話を描いてるようで描いてない。ヤマなしオチなし意味なしだ。筋立てにまとまりというものがない。すべてが生煮えの中途半端。『ヤマト2199』と同じ。

まず最初にマモルとススムの兄弟が出てくる。その両親が離婚しようとしているらしいが、離婚してどうする気なのかなんの説明もないものだから見ていて困るばかりである。いきなりススムが、「どうしよう、兄さんと離れ離れになるのはイヤだよ!」なんてグダグダと言い出しても、


『知るか、そんなの。だいたいお前ら、話の中心人物なのか。お前らが出てくるたびに話が止まるだけなのだから早く恐竜に食われてくれよ』


としか考えの持ちようがない。間違いなくほんとは長いシーズンドラマで、このふたりの両親がアメリカ内地で、


「ああどうしよう、子供達が、子供達が」

「そんなことより離婚の話しようぜ」

「バカ! 人でなし!」


なんてなことを二十四回にわたってやる構想があったのだろう。君はそういう連ドラが好きかもしれんがおれは嫌いだ。くだらん。これは二時間に詰めるにあたって真っ先に切られて当然である。

しかし、それなら離別の危機のドラマなんか全部まるまる抜き取ればいいのに、尾てい骨となって残っているのだな。 〈尾てい骨〉と言うよりも、10センチばかりの〈しっぽ〉として残ったものを、『ホラホラどうだ動くんだぜ〜』なんて見せられてる感じ。

意味ねえ! 削れ! 全部削れ! ちゃんとキッチリ描く気がないなら最初からやるな! そのように、画面に向かって叫びたくなってくるのである。

案の定、兄弟の両親はその後まったく話に出てこないので、離婚の話がどうなったのかは神のみぞ知るである。つーかもう親なんかどうでもいいやあなんて感じで話が立ち消えてしまってるのが海外ドラマにありがちなところで、しかし普通は3シーズンばかりもかけて話があらぬ方向に転がっていってしまうところがこの映画は二時間でやる。そこがすごい。たぶん二十四時間でやれば、きっと兄弟の父親が、ティラノに食われてサヨウナラなんてことになるのじゃないか。

父が食われりゃ兄弟は離れ離れにならなくていい。よかった。それでハッピーエンドだ。それはそれでいいとして、次にこの兄弟が、古いジープを修理して走らそうなんて展開になる。

『えーっ? バッテリーどうすんだ』と思って見てると、あるんだよね、バッテリーが。『手で無理矢理にエンジンを始動させる方法を何か考えられんのか。それに、タイヤの空気はあるのか?』とかも思うが、まあいいとしよう。クルマを直して走らすのはいい。だが障害にぶつかって、ステゴサウルスか何かを怒らせ――なんてなことになるんかしらと思って見てると、ない。そんなの何も起きない。危険地帯をまっすぐ抜けて安全な場所に着くだけという。

ならばこれも最初からやるな! 削れ! 全部削りやがれ! つーかこの兄弟は、話に全然要らねえだろう! もう最初から映画に出すな! そう考えてしまうのである。

しかしだ。『ジュラシック・ワールド』の最大の問題は別にある。なんと、それでもこの兄弟が、話の登場人物の中でいちばんマシであることだ! より主要であるはずの他のキャラクターどもについてはここにまったく書く気も起きない。見ていてあまりにどうでもよすぎて、恐竜に食われて死ぬのを見ても『いいぞいいぞ』という以外になんの感慨もわかないのだ。逆に、食われず最後まで生き残ったりするのを見ると、『ちっ』と舌打ちする気分になる。

そしてまた、そうなるのは最初の十五分を見て予測はついているというのに、最後までなぜか見させてしまうものをこの映画が持ってることだ。忌々しい。

つまらんのに! 目新しいものなんかひとつもありゃしないのに! すべて生焼け生煮えの、外は黒焦げ中はドロドロの失敗したお好み焼きみてえな映画なのによお。

これはどういうことかというと、あれだ。ひとりいるんだよ。兄弟以外の主要キャラは全員ダメだとおれは書いたが、実はいるねん。明らかに主役じゃないのに主役みたいな顔をして話の中に割り込んでくるマイク・ウォーレンみたいなキャラが。こいつが何かやってくれるんじゃねえのかと期待するから最後まで見てしまうんだ。

そうだろう。見ちゃった後でやっぱりあかんかったとなるが、ねえ、主役じゃないのはさ、十五分見てわかるんだから。こいつがマイク・ウォーレンであって主役じゃないのは出た瞬間にわかるんだから。なのにまあよくもよくも、『もういいやこんな映画はハードディスクから消しちまおう』とおれが思うタイミングで画面の中に出てきやがって、悔しい。とにかく、連続ドラマ的な造りの話はいけねえ。

特にすべてが生煮えの中途半端なものはいけねえ。『ジュラシック・ワールド』という映画はそれだ。やおいだ。出渕裕あたりが作るテーブルトークRPGのリプレイと同じと言うしかないのだから、このログも、『ヤマト』と関係ないようでいてちゃんと関係あることがおわかりいただけることだろう。

で、しかしだね、こんな話をなんでここに書いているかと言うと、実は本題が別にあるのだ。君らの中にはこれを読んで、『お前が書いてる「ヤマト」の小説こそなんだ』と、おれに対して考えを持つ人間がいるんじゃないか。無理だと思うがもし君が少しは頭が働くようならそうじゃないのかと思うからだ。

ねえ君、どうだね。思わんかね。おれに対して、どうだい。


『お前が書いてる「敵中」こそテレビドラマじゃねえのかよ。海外ドラマのメソッドで作ってんじゃねえのか、話を、ええ?』


なんて、思うことがないかね。どうだ。君程度のどうしようもない頭でも。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之