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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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都はひどい有様だった。雨の降らない夏。作物は育たず、水は枯れ、往来に倒れた人々の死体から広がる疫病。死の匂いのする都。栄華を誇る京の都が、いまや死と病のはびこる地獄である。

雨師の兄妹は、父である当主とともに、衛士らを率いて都へとやってきた。帝からの勅命により、この地に雨をもたらすそのために。

妹は内裏で祈祷に入り、兄は鎮守の森にある、水神の住まうという池のほとりで、飲まず、食わず、眠らず、ひたすら窮状を訴え続ける。

(もう、八日目になろうか・・・)

池のそばに作られた粗末な祭壇。周りを縄と紙垂にぐるりと囲まれたここで、喉の渇きなどとうに麻痺した少年は考える。

(雨が降らぬ・・・)

みずはめの祈祷が、届いていないというのだろうか。もう空腹さえ痛みに変わっている。渇いたくちびるからは声も漏れない。それでも少年は慣れていた。痛みも渇きも飢えも、「あめふらし」として生まれた頃から慣れっこだ。身体もそのようにできている。常人よりも飢えや渇きに耐性があり、強靭なのだ。しかし痛みや苦しさが軽減されるということは一つとしてないのだ。

(・・・おかしい、)

「巫女」と、「あめふらし」。二つの力で雨は降る。これまで、必ず降ったのだ。だからこそ一族は繁栄し、妹は尊ばれている。