小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(下)

INDEX|7ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

第17部 俺が連れて下りる



おまえが
ハルラ山に
行ったって聞いた

よりによって
誕生日に
たったひとりで
登るって

聞くなり即
車と飛行機
乗り継いだ

3年ぶりの
ハルラ山
でも
素人の女の足だ
追いついてみせる

おまえはまるで
3年前の
俺そのもの

ヒジンへの
怒りと恨みで
夢中で登った
俺そのもの

だから
手に取るようにわかる

ふんぎりつけに
行ったんだろ?

もう限界だ
いいかげん見切りを
つけてやるって

それも一理

「改名なんか言語道断
サムスンがいい」の
一点張りで

いっぱしの
彼氏気取りで
偉そうに
人の悲願に
首つっこんで

そのわりに
会わせちゃいけない
女2人を
バッタリ会わせる
無神経

自業自得で
しどろもどろの本人は
それでも懲りずに
二股清算
日一日と
ぐずぐず延ばして

惚れた女の
堪忍袋が
たったひとつの
頼みの綱で

俺が女でも
愛想尽かすよ
まちがいなく

でも サムスン

この俺が
身勝手なのは
今に始まった
ことじゃなし

もう少しだけ
俺に時間を
くれないか

他でもない
おまえだから頼む

おまえに
降参したあの日
俺は決めた

もう
逃げも隠れもしない
真っすぐ受け止めて
応えると

堂々とおまえを
受け止めて
これからいっしょに
歩いていくと

だからその前に
誠心誠意
彼女の心と
向き合ってくる
とことん
許しを乞うてくる

彼女には
一生恨まれても
しかたない
憎まれて当然

じゃなきゃ
これっぽっちも悪くない
彼女の立つ瀬が
ないもんな

誰かさんを見習って
真っ正面から正々堂々
恥をさらして
詫びてくる

だからもう少し
ほんとに
あと少しだけ
俺に時間をくれないか

岩陰に
白い小さな
花が揺れてる
こんな雨でも
笑って咲いてる

サムスンを
見かけなかったか?
この道
通って登ったろ?

サムスン
今 どこ歩いてる?
無事なおまえの
顔が見たい

俺の二の舞だけは
させない
おまえは俺が
連れて下りる

3年前の
俺みたいに
ひとりで山を
下りるなんて
泣きたくなるような
心細さ
おまえに
味わわせたくない

容赦なく
腹の底から
俺に小言をぶちまける
この世で2人と
探せっこない
おまえを俺は
絶対 連れて下りてやる

もう頂上に
着いたのか
それともどこかで
追い越したのか

道中最後の
休憩所なんか
とっくの昔に
過ぎたのに
未だにおまえに
出くわさない

登る道々
雨はひどくなる一方で
イライラしながら
毒づいた

ド素人が!
天気予報ぐらい
見て登れ!

人っ子一人いない
頂上で
待つにも待った
ごたいそうな
天気だった

辺り一面ガスの海
視界は10メートル
あるかないか
男でも
吹っ飛びそうな
暴風雨

おまえを連れに
来たんじゃなかったら
頼まれたって
登るもんか

それより何より
登頂する気が
あるのかないのか
それとも途中で
行き倒れたか

いやな予感が
首もたげたころ
聞き覚えのある
悪態聞いた

遠くかすかに
暴風混じりに

目をこらした先
ガスでかすんだ
声の主は

お世辞にも
登ってるなんて
図じゃなくて
登山路わきの
柵にすがって
どうにかこうにか
這いつくばってた

やおらめでたく
登頂するなり
見えないふもとに
雄叫び上げた

サムスンやめて
ヒジンになるだの
俺とは金輪際
おしまいだの

人に
死ぬほど心配させて
よくもまあ
ぬけぬけと

おまえとわかった瞬間は 
足も萎えそうなほど
ホッとして
2時間待ったことぐらい
水に流してやるはずだった

だけど
そこまで言われて
黙ってられるか

誰がキム・ヒジンだって?
誰がお払い箱?
そんなの誰が決めた?

ガスの中から
怒鳴ってやった