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俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(下)

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第20部 手をつないで歩こう



「いいもの
見せてあげようか」

やぶから棒に
急かされて
向かった先は
大通り

バス停わきの
詩の看板

おまえはおどけて
指さした

買い物帰りに
ひょいと見かけた
足が向いては
読みに来たと

大して長い
わけでもない
3度も読めば
覚えてしまう
なのに なぜだか
足が向いたと

 ………

《愛せよ
 傷ついたことなど
 ないかのように》


 踊れ
 誰も見てなど
 いないかのように

 愛せよ
 傷ついたことなど
 ないかのように

 歌え
 誰も聞いてなど
 いないかのように

 働け
 金など
 必要ないかのように

 生きよ
 今日が最後の日で
 あるかのように

      スーザ

 ………

異議なし

一言一句
異議なしだ
スーザ氏に同感

そして
恩に着る

こいつがここに
立つ度に
あんたの詩が
叱咤したのか
鼓舞してくれたか
俺は知らない

こいつがここで
読む度に
あんたの詩に
うなづいたのか
ケチつけたのか
知る由もない

だけど
他でもない
あんたのこの詩が

俺のマヌケな
留守中の
こいつの支えで
いてくれたこと

心の底から
恩に着る

なあサムスン

一言言わせて
もらえれば

俺だったら
偉大なあの詩に
無礼を承知で
最後に一節
つけ加えるね

宣誓のつもりで

おまえと
俺とが
この先ずっと
こうありたいって

“歩け
 怖いものなど
 何もないかのように”

人間は
いつか死ぬって
わかっていても
生きるだろ?

それだったら
勇ましく
大手を振って
堂々と 
歩いたもん勝ち

だろ?

今日もいい天気

サムスン 歩こう
手をつないで 歩こう

俺たちのことだ
これからだって
飽きずに
しょっちゅう
けんかもするさ

腹が立って
どっちかが
いやどっちもが
手をはなすことだって
しょっちゅうあるに
決まってる

だけど
これだけは言っとく

いつだって俺は
いっしょに歩く

知らんぷりして
先に行ったり
行きたきゃひとりで
勝手に行けって
しらばっくれたりなんか 
二度としない

胸がすくほど
真っすぐな
おまえの隣に
潔く
堂々と
俺も立っててやる

そして
いつだって隣で
いっしょに歩く

すねようが
ぐずろうが
むくれようが
駄々こねようが
そんなこと
知ったことか

そのときは無理やり
手を引っぱってでも
どこまでもおまえと
いっしょに歩く

階段も
山道も
どこまでも

だから
覚悟しとけ


     <完>