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つだみつぐ
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novelistID. 35940
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無農薬ということ

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10.前に進むために



 ある時私は列車のとなりの席の人と世間話をしていました。20年か25年前のことです。その人のふるさと北海道について当時私はほとんど何も知らなくて、「バターがおいしくていいですね。」などと間の抜けたことをしゃべっていた気がします。
 急にその人は少しまじめになって、「雪印はひどい会社です。」と言いました。
 私は何のことかわかりませんでした。その人は雪印は膨大な土地を所有し独占的な力で農民を締め付けひどいことをしている、という意味のことをしゃべりました。そして、
 「あれでも最初は生協だったんですからね。」
 「えっ?」

 怠惰な私は今も、雪印が本当にかつては生協だったのか確認していません。ただ、例えば労働者の理想の王国だった社会主義国家がことごとく反人民的な抑圧機構に転化していったように、ある運動が「発展」することで、乗り越えようとした「悪」そのものに成り変わってしまうということ、それは何故か、という問題は私の中にずっと突き刺さったままです。

 正しい思想を注入することでなく、誤った思想から解き放つ思想運動、正しい食べ物を食べなくてはいけないとすることでなく、間違った食べ物を食べなくてもよいようにする食べ物の運動。「拡大」だとか「売上」だとかの「目標」を設定することでなく、一人一人がどんどん自分自身になっていくことでまわりにしあわせを分かち合って広がっていく運動。いわば運動でない運動。組織でない組織。

 それでも「どうしたらいいのかわからない」と嘆く人に私は伝えたい。「道が見えない」ことはあたりまえのことなのだ。誰も行ったことのないところへ行くのだから。
 肩をたたき合いながらずっと遠くまで歩き続けることしかないのだから。
 もしもあなたが人間が好きで、地球が好きで、子供たちが大好きなのだったら。

作品名:無農薬ということ 作家名:つだみつぐ