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愚者その2

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ある日店で

優秀な幹部と彼らに育てられた優秀なスタッフのお陰で古井和夫の運営するパチンコ店“エイト”は今日も開店からしばらくして満台である、パチンコ店では客が全ての台に座り稼働している状態になると通常店舗のように席が埋まる事を満席と言わず満台と表現する事が多い。開店は午前10時だが自分の打ちたい台を狙う為に開店前の朝早くから店舗の入り口で並んでいる光景を目にする人も多いだろう、狙う台は人それぞれで昨日よく出ていた台を狙う者或いはその真逆の昨日全く出ていない台、前日に自分が沢山のお金をつぎ込んだ台、狙う台には人それぞれの思いがある。店舗によっては開店の前に整理券を配ったり抽選をしたりと入場方法はさまざまで何処の方法が気にいるかは客任せで店側は気に入らなければ来なくても良いと言う悪までも強気の姿勢の所が多い、客は店の方法に従うほかはなく例え整理券が不正に配られても抗議する事など滅相もない事で仮に抗議でもしようものなら店側から出入り禁止を言い渡されてしまう可能性が高い沢山お金を使うお客様よりも遊び場所を提供する側が圧倒的に強いという少し不思議にも思える店と客との関係・・ある意味業界独特かもしれません。
 さて、開店より満台のエイトは店内には台が取れなくてウロウロと通路を歩き回る人も目立ち始めた、通路を店員が忙しく走り回り事務所のモニターからは店内の至る所に設置された監視カメラの映像が映し出されその様子を把握しながら店舗のスタッフ主任の吉田がインカムと言う通信装置を使い店舗スタッフのイヤホンを通して適切に指示を与えていくこれにより店内を効率良くスタッフを動かし事務所に居ながら店全体の様子を把握するのである。大抵の場合店舗の天井にドーム型のカメラが取り付けられその性能は素晴らしくズームにすればお客の手元はもちろん携帯の画面の文字もハッキリと見ることができるそんなカメラだから古井和夫は店舗を監視するわけはなく来客女性の顔や胸の谷間太ももをズームアップで楽しみニヤニヤと不適な笑みを浮かべながら他の者に軽蔑されている事などそっちのけでひたすら画面に釘付けになり下着や口元が見えれば時折奇声まで発する・・そんな様子を横目で見ながらスタッフ主任の吉田はいつも思うのである「何が楽しくてこの人は生きているのだか・・・」五十五歳にもなって20代に見下される・・・そうだから古井和夫なのである。

作品名:愚者その2 作家名:松下靖