小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アキちゃんまとめ

INDEX|47ページ/75ページ|

次のページ前のページ
 

ストロベリーパニック


ヒナにとってイチゴはとくべつな食べ物。

ヒナはイチゴが好き。あのきらきらした、おばあちゃんの持ってる宝石みたいな色も、ぱくっとしたときに口の中にじゅわっと広がる甘いのも好き。今、お外から帰ってきましたっていう緑色のヘタがついたままのイチゴに、台所で水道のシャワーを浴びせてあげてから一口でかじるのも好き。ヘタを先に取ってからお上品に頭からちょっとずつかじっていくのも好き。
それと、ヒナはケーキも好き。パパとママはいつもヒナにイチゴのケーキを買ってきてくれるけど、もしパパとママの方にイチゴが居たら、ヒナにくれる。銀色のぴかぴかのフォークに、つやつやのイチゴを乗せて、真っ白いお皿に転がしてくれる。ヒナはフォークでイチゴを口の中に入れる。
甘いクリームをちょぴっと一緒に食べると、もうほっぺたがとろとろになるんじゃないかって思うの。甘いのの中にふんわりすっぱい匂いがまじって、もう、なんてしあわせ!

だから、今泉くんと杉元くんがイチゴをたくさん食べさせてくれるって聞いて、飛び上がるくらい喜んだ。ママとパパがいってらっしゃいって玄関で手をふってくれて、いってきます! ってヒナも手をふってきた。

「イチゴがたくさん…!」
「あそこにあるのはどれだけ食べてもいいやつだから、遠慮しないでいいんだよ」
「ケーキも? タルトも?」
「あぁ」

ビュッフェっていうんだって。ここにあるのはどれだけ食べてもいいんだって。
杉元くんと一緒に、端っこから歩いて、メニューを読み上げていく。
つみたてイチゴ。はっしゅるいのマカロン。イチゴ、レモン、まっちゃ、ピスタチオ、グレープ、ココア、チョコレート、ラズベリー。イチゴのショートケーキ。イチゴのタルト。イチゴのモンブラン。イチゴのロールケーキ。イチゴとマシュマロスティック。イチゴのプディング、イチゴのアイスクリーム、イチゴのシャーベット……
スープやサンドイッチもあるぞ、と今泉くんが言った。でもヒナはもうイチゴのことしか考えられないから「そっちはいい!」って言った。こんなにたくさんのイチゴを食べれるなんて、ヒナは今日、この世で一番幸せな女の子!

「いただきます!」
「いただきます」
「……いただきます」

ヒナのお皿にはイチゴのケーキを二つと、イチゴとマシュマロのスティックを乗せて、それからイチゴを六つ、のっけてきた。
まずはケーキから! ってフォークをさす。スポンジがふわふわで、フォークのつま先がぴょんと跳ね返ってくる。ヒナはわくわくしながらスポンジ部分のあいだにフォークをさして、イチゴごと、スプーンですくうみたいに食べる。
ぱくっと口に入れて噛むと、イチゴのぷちぷちした種の次に、じゅわっとした甘いジュースが口の中に広がる。つばがたくさん出て、慌てて上を向いて飲み込んだ。

「〜〜〜おいしいっ!」

イチゴのモンブランも、ホワイトチョコレートで作られたお山がとっても甘くておいしくて、マカロンもサクサクと食べれちゃう。
おいしい、おいしい! ってわくわくした気持ちで食べてたら、みるみるお皿の上はからっぽになる。おかわり! って言おうとして右を見たら、コーヒーを飲んでる今泉くんと目があった。

「取りに行くか?」
「……うん」

今泉くんはヒナのお皿をもって、タルトとプディングを乗せてくれた。これでいいか? ってきかれたから、うん、って答えた。

「どうした?」
「ううん」

ヒナは首をふった。だってほんとうになんでもないんだもん。
イチゴはやっぱりおいしかった。アイスクリームは冷たいのに、口の中でさらっと溶けてすぐにごっくんできる。頭だってキーンってしない。ロールケーキはヒナの背くらいあって、そこから好きに切り取ってもっていっていんだって。
いくつもイチゴを食べてるうちに、お皿の上にヘタが山盛りになる。でも、おなかのどっかがまだ空っぽで、なんだかとっても寂しくなった。
ママの好きなのはイチゴのタルト。パパが好きなのはイチゴのアイスクリーム。
窓の近くにおおきくできたマカロンタワーを見てみる。たぶん、ママじゃあのてっぺんには届かない。パパが背伸びしてやっと手が届くくらい。マカロンタワーのてっぺんにあるイチゴを、今泉くんも杉元くんもきっと取ってくれる。はいってヒナに渡してくれる。でも、ヒナはそれが食べたいんじゃないの。
じわっと目があつくなる。ヒナはもうステキなお姉ちゃんに成長したから、こんなすぐに泣かないの。ひとりで寝れるしお皿もキレイに洗える。

「……う、ぅえぇえ」
「うぉっ!? どうした!?」
「ママぁ〜〜〜!」

だけどここにママがいないのはさびしい。パパがいないのもちょっとさびしい。
ヒナは、トクベツだよって、ママのケーキのてっぺんにあるイチゴがほしいの。パパがスプーンですくってくれるアイスクリームがたべたいの。
ヒナは今泉くんと杉元くんに頭をなでてもらったけど、その手はママでもパパでもない。
今度はパパとママとも一緒にこようねって杉元くんが言ってくれて、ヒナは何度も、うんって言った。ママがポッケにいれてくれてたイチゴのハンカチもぐしゃぐしゃだ。

ヒナのとくべつなイチゴはパパとママがいるからとくべつになるんだ。ヒナは何度もしゃっくりしながら、今泉くんの車にのせてもらう。帰るまで寝てていいよって杉元くんが言ったから、ヒナはうんって言う。
はやくパパとママに会いたい。それからママの車いすをおして、イチゴのケーキを買いに行くんだ。





(すみませんが、このホテルの持ち帰り用ケーキはありますか。……はい、じゃあそれを。端から一つずつお願いします。いえ、全部。)
(買いすぎだよ今泉!!)
※ヒナちゃんを甘やかす今+杉
(2016/05/11)
作品名:アキちゃんまとめ 作家名:こうじ