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夢と少女と旅日記 第6話-2

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 5月19日

 今朝ニュースを観て、ギルド本部に行ったら、タレ目の女の人に突然話しかけられました。
 何を言われたのか分からなかったので戸惑って、「なんの用ですか?」と訊いたら、「あ、エマーレ国出身の方でしたか。てっきりアラドミア国の住人かと」とエマーレ語で言ったので、多分最初はアラドミア国の公用語であるトワランド語で話しかけてきたんだと思います。
 その女の人のうしろから、もっと大人っぽい女の人が来て、女の人に何かを尋ねましたけど、それも何を言っているのか分かりませんでした。ただ、多分トワランド語なんだろうなとは思いました。
 サファイアはトワランド語も分かるので、あとで何を言っていたのか訊いてみましたが、「その子、トワランドの子じゃないのかしら?」と言っていたそうです。
「えーっと、失礼しました。あ、私もエマーレ国出身なんですよ。美少女旅商人のネル・パースと言います。
 こっちは旅の魔術師のローラ・モーガンさんです。今訊いたところ、エマーレ語は分からないそうなので、必要があれば私が通訳しますね」と一方的に自己紹介して来て、私は尚更何が何やら分からなくなってしまいましたが、自分も自己紹介をしなくてはと思いました。しかし――、
「……というか、なんかどっかで見たことがある顔ですね。もしかして、雑誌とかに顔写真が載っていませんでしたか?」と女の人が先に訊ねてきました。なので、その質問に応えてから自己紹介することにしました。
「は、はい。一応雑誌に載ったことはありますけど……。私、旅芸人なので。名前はサンデー・ラウと言います。こっちはサファイアです」
 私にガイドさんのように紹介されたサファイアが私の代わりに訊いてくれました。それにしても、あんまり有名な雑誌じゃないのに、私のことを知っていたなんでびっくりです。
「あのさー、それで私たちになんの用なわけ? この子、人見知り激しいんだから、あんまり困らせないでよね」
「あ、すみません。用件を言うのが遅れてしまって。えっと、あなたたちもニュースを観て、ここに来たんですよね? たまたま妖精連れってことはないでしょうから」
「そうよ、なんか文句ある?」
「サ、サファイア……、あんまり喧嘩腰にならないで……」
 サファイアはじっと睨みを効かせました。私は慌ててフォローをしようとしましたが、女の人、――ネルさんは気にしてない様子でした。
「あはは、いいですよ、これくらい。それよりも聞いてもらえますか、私たちの話を」
「まだ時間はあるからいいけど、手短にお願いするわよ」
「っと、その前に訊いてもいいですか? それによって、こちらの話も変わってくるので。例えばの話なんですけど、突然街中で知らない人に道を尋ねられたらどうしますか?」
「? そりゃ、私に分かるんだったら教えますけど」
「じゃあ、その人がお礼だと言って、お金を渡してきたらどうしますか?」
「ええっと、それくらいのことでお金を貰うわけにはいかないので断ります」
「お金が欲しくはないんですか?」
「もちろんあれば困ることはないでしょうけど、別に生活には困ってないですし……」
 質問の意図は分からなかったけれど、考えるまでもありませんでした。私は旅芸人としての収入だけでもなんとかやっていけていますし、お金や人気なんかより、ずっと大切なものがあると思っています。私はお金のために、自分の信念を曲げることなんてしたくありません。
「なるほど。では、どうしてわざわざギルドまで足を運んだんですか? お金目当てなわけではないんですよね?」
「それは――、私たちの力だけじゃナイトメアを倒すことはできないと思ったからです。今朝、ニュースで見て、私たち以外にも夢魔と戦っている人が大勢いるんだなって思いました。
 だから、きっとその人たちと強力すれば、ナイトメアを倒すこともできるんじゃないかって」
「あはは、なるほどなるほど。いやー、なんか出来過ぎてますね。私もなかなかの強運の持ち主なのかもしれません」
 女の人は独り言のように言ったので、私は「はあ」としか言うことができませんでした。そのあと、大人っぽい女の人と何かをお話していました。
「ふむ、ローラさんもやっぱりそう思いますか。ここはストレートに言った方が良さそうですね」
「何を、ですか?」
「私たちと同盟を組んで、ナイトメアを倒さないかという話です」
「? あなたたちもギルドの人なんですか?」
 私は疑問に思ったことをそのまま口にしました。
「いえ、そういうわけではありません。ギルドの連中ははっきり言って信用できません。奴らはみんなお金目当ての連中ですから。
 しかも、奴らはテレビで『ギルドで発行された証明書を持つ者以外は信用しないように』などと呼びかけてきやがったので、このままじゃ私たちは身動きできなくなってしまいます。
 ですので、あなたにお願いがあるのです。あなたはこのままギルドと契約して、そこで得た情報と証明書を横流しして欲しいんです」
「は、話が急過ぎてよく分かりませんけど、それでナイトメアを倒せるのなら――」
「というか、その前に! あんたたちが信用できるって証拠はないでしょうが!」
 私の言葉を遮り、サファイアが怒鳴りました。それでも、やっぱり女の人は特に気にしない様子でした。
「私たちをすぐに信用しろと言っても、無理な話でしょうけど、ギルドの連中が信用できないのは、説明会を受けてくだされば、多分分かると思いますよ。
 この話の続きは、その説明会のあとですることにしましょう。っと、ちょっと待ってくださいね」
 女の人はそう言うと、腰につけた袋からペンとメモ帳を取りだし、走り書きで書いたメモを千切って私に差し出してきました。
「これ、私の携帯番号ですから。私たちはしばらくこのあたりでぶらついているので、説明会のあとに気が向いたら電話してください。ではでは、それでは」
 女の人は強引に私の手にメモを握らせると、大人っぽい女の人と妖精ふたりとで去っていきました。
 そして、そのあと、私とサファイアは説明会を受けて、女の人が言っていたことを理解することになりました。