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メドレーガールズ

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  帆那でなきゃ駄目なんだ



 メドレーリレーのメンバーが発表されるまで、寝ても覚めても落ち着かない日々を過ごしていたのが、いざ選ばれると不思議と緊張の糸が解けてしまった。本番まで1ヶ月、それがいけない事であるのは痛いくらいわかっているのに、これからテンションとタイムは上がるどころか、逆に悪くなってきた。
 その原因は分かっている。苦しいけれど充実した練習ができるのは、本当に信頼ができる仲間がいるからなのに、それぞれが見ている先はバラバラだし、さらに本気モードで練習していると実力に劣る私が取り残された感じがするからだ。今までそこにあった安心が見えないことが怖いのか、泳げば泳ぐほど自信と日頃の笑顔まで無くなって来た――。

「どうした、蓮井!」
「はいっ!」
 練習後のミーティング、先生は私に檄を飛ばした、いつもより厳しい。理由がわかっているのに、どうしたらいいのかわからないのが痛い。
「最近メリハリがないけど、何かあったの?」
「いえ……」
一つになっていない、そう思うのは私だけだ。他のメンバーはそれぞれ思いをもって目標に向かっている。気分的にも私だけが取り残されているような感じがするとは言える筈がない。
「何があったか知らないけど、自分で気付かなきゃ解決しないよ」
 先生は私に冷たく言い放った。横にいた律っちゃんは驚いて先生の顔を見ていた。この時期にそんな台詞が出るのがちょっと信じられないと思ったのは私だけでないようだ。
「そうね、でなきゃ終わってしまうよ……」
横で腕組みをした真由は先生と同じことを言い出した。ある意味で真由の運命は自分に託されている。そう考えると、私は嫌な重圧に押しつぶされそうな気持ちになる。

 みんなバラバラだ――

 私たちの目標は一つであり、勝つためには一つになることが絶対条件であるはずなのに、その道のりはそれぞれ違う、そしてこの先も――。それはわかっているのだけど、この先私たちは一つになれるのか、自分だけではどうしようもない不安が自分の気持ちを曇らせていることは確かだ。

作品名:メドレーガールズ 作家名:八馬八朔