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夢と少女と旅日記 第5話-6

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「どうかしましたか、エメラルドさん?」
「いえ、その、ナイトメアを倒すという話なのですが――」
「それを今から話そうとしていますわ」
 私とローラさんは訝るようにエメラルドさんを見ました。その視線に緊張してしまったのか、エメラルドさんは動揺した様子でしたが、それでも勇気を振り絞るかのように疑問を口にしました。
「あ、あのギルドに集まっていた人たちのことなんですけど……、少し変だと思いました……」
「変……? っていうか、いちいちこっちの反応待たないで、さっさと言ってください、さっさと!」
「ひぃ! は、はいッ!!」
 ったく、私相手に何ビビってるんですか。まあ、何言ってんだこいつみたいな空気の中じゃ喋りにくいのは分かりますけど。
「その、彼らはどうしてナイトメアを打倒しようという話はしなかったんでしょうか?
 いえ、確かにナイトメアを倒してしまったら、もうそれ以上夢魔退治で稼ぐことはできなくなるでしょうけど、それでも国から莫大な報奨金が出るはずです。それで十分と考える人だっていてもおかしくないのに……」
「はあ? 何言ってんだこいつ」
 あ、ルビーさんがさらっと言っちゃいました。あんまり頭が良くなさそうな人に馬鹿にされたせいか、エメラルドさんがショックを受けた顔をしました。
「ど、どういうことですか!?」
「証明が難しいからだと思いますわよ」
「だよな。証人を連れて行くってのも難しいし。エターナルドリーマーへの負担を考えればな」
「まあ、証拠を残すことが不可能とも限りませんけどね。でも、信用に足るかと言えば、やっぱり微妙ですね」
「え? え? な、なんの話ですかー!?」
 勝手に納得する私たち3人と、全くついていけてないエメラルドさん……。残念すぎて、ルビーさんと交換して欲しいくらいです。
「まあ、エメラルドさんをいじめるのはこれくらいにして……、要するにナイトメアを退治したことを証明することが難しいという話です」
「証明が難しい……? で、でも、ナイトメアを捕まえるなりすれば……」
「まず第一に、ナイトメアを捕らえることが可能なのかどうかが不明です。夢の世界のものを現実世界に持ち帰ることはおそらく不可能なんですよね?
 前にエメラルドさんも、夢の世界で食事をしても、現実世界に戻ったら腹ペコになってしまうと言ってたじゃないですか」
「補足致しますけれど、わたくしももしかしたらと思って、夢の世界で拾った小石を鞄の中にしまったことがありますの。
 でも、現実世界に戻ったときには綺麗さっぱり消えていましたわね」
「でも、ナイトメアはものじゃないですよ。やっぱり捕まえられるかもしれないじゃないですか」
「確かにその可能性もありますよ? でも、捕まえられない可能性だってあるという話です。
 そんな不確実なことに全力を尽くせますか? そもそもあいつらは逃げようと思えば、自由に夢の世界を行き来できるようですし」
「それにもし仮に捕らえられたとしても、誰がナイトメアの顔を知ってるって言うんだ?
 全く関係ない魔物をナイトメアだと言い張ってるという可能性が否定できないのなら、証明にはならないぜ」
「んん……、でも、ナイトメアを倒せば、エターナルドリーマーの人たちは全員、夢魔から解放されるでしょうから、それが証明に――」
「あのですね、ナイトメアを倒したと主張する人が複数人現れたらどうするんですか。
 というか、絶対現れますよ。その中の誰かは本当にナイトメアを倒しているかもしれませんけど、嘘を吐いて報奨金だけ得ようとする人は絶対現れます」
「あうう、でも、……えーっと、ごめんなさい。もう何も思いつかないです……」
「これは普通の魔物退治とは違いますわ。ナイトメアを無事に退治できたとしても、わたくしたちが“英雄”になれることはおそらくありませんわ。
 そういう戦いに身を投じようとしているということは自覚した方がいいかもしれませんわね」
 そう、私たちはナイトメア退治を成し遂げようと、おそらく何も得られません。でも、それでいいんです。
「むしろ全てを投げ打つ覚悟でなければ、ナイトメア退治は成し遂げられないと思います。
 そこで、話を本題に戻そうと思うのですが、ナイトメアを退治するためには、どうにかして、奴を誘き寄せるしかないと思います」
「その『どうにかして』という部分が難しいですわね。ただ、ナイトメアも自分の手下たちが次々と倒されるようなことがあれば、黙って見過ごすわけにはいかないと思いますわ。
 わたくしたちにできるのは、ひたすら夢魔を倒し続けることかしらね。そうすれば、そのうちナイトメアも直接わたくしたちを始末しようとするかもしれませんわ。
 まあ、希望的観測ですけれど、今できることはそれしかありませんわね」
「しかし、ギルドの連中を敵に回しちまったんだぜ? 奴らに妨害されたら、普通の夢魔を倒すことだって難しいんじゃないか?」
「そこは私に考えがあります。その考えとは――」
 ――と、今日の日記はこれくらいにしておきましょうか。多分明日の日記で同じようなこと書くことになると思いますし。
 今はローラさんとルビーさんと別れて、エメラルドさんと一緒に宿屋に泊まっているところです。
 それでは、明日に備えて眠るとしましょう。明日からがナイトメア退治の本番開始ってところですからね。おやすみなさい。