小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

紺碧を待つ 神末家綺談3

INDEX|9ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

見えない誰か



ゆさゆさと、誰かが肩を揺さぶっている。心地よい眠りから覚め、伊吹は目をこすった。

「伊吹くん、着いたよ」

紫暮の声、自動車のエンジン音。目を覚ました伊吹が車内から見たのは、夕暮れの近づく山際の、強烈なオレンジ色だった。

「・・・ここ?」

京都から新幹線で二時間、そこから在来線に乗り換えて一時間、更に車に乗り換えて三時間。目的地に着くころにはクタクタだった伊吹だが、これから仕事が始まるのだ。へばってはいられない。

伊吹らと荷物を下ろすと、ここまで送ってくれた依頼主の親族とやらは、逃げるようにして山を降りていった。

「ここが、神隠しの家・・・」

広大な山を背に立つ、巨大な二つの建物。立派な日本家屋だ。ここへ来るまでに小さな集落があったらしいが、屋敷周辺には民家は見当たらなかった。暗くなりつつある空の下に広がる広大な日本庭園は、木が折れていたり灯篭が倒れていたりとひどい有様だ。

(不気味だ・・・)

伊吹はそう感じた。不気味だ。
死んだ家、死んだ庭。そんな想像を抱かせる。

「お待ちしておりました」

依頼人の館林(たてばやし)が大きな玄関口に立っている。せわしなく視線をうろつかせる老人は、何かに怯えるように肩を縮めている。手短に自己紹介をしたのだが、彼の耳には入っていないように伊吹は感じた。老人は恐れている。この家を。

「依頼内容は事前にお伝えしたとおりです」

震える声で彼は言い、茶封筒を穂積に手渡した。