小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

紺碧を待つ 神末家綺談3

INDEX|5ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

神隠しの家



薄紅の着物。結い上げた美しい白髪。刻まれた皺が微笑みをいっそう優しく見せてくれる。清香を前に、伊吹は懐かしく温かな気持ちが湧き上がってくるのを感じた。

「五年ぶりどすな」

心地よい京都弁を操る当主、須丸清香。優しいおばあさん、という容姿とは裏腹に、彼女が須丸家を取り仕切り、政界とも通じている大物であることは周知の事実である。神末と須丸を守るためならば神でも殺す女だ、とは瑞の言だ。

「ご無沙汰をしております」
「そんなかとうならんと。ほら、お茶でも」

広々とした座敷からは広大な庭園が見えた。大きな池、手入れされた庭木たち。その向こうに佇む山は滴るような緑である。

「おかわり」
「あんたに飲ます茶はない」
「氷のような女だ」
「池の水なら飲み放題、好きなだけどうぞ」

瑞に対してのこの冷ややかな態度は、若かりし乙女だった清香が、穂積に恋をしたのを瑞がことごとく邪魔したから、と聞いた。邪魔も何も、穂積は神の花婿。最初から報われない恋だったんだからいいじゃない、と笑う瑞だが、彼女の恨みは深そうだ。

「お待たせをいたしました」

紫暮と絢世がやってきて、清香の隣に座る。立派なヒノキの座敷机を挟んで、伊吹、穂積、瑞が並んだ。

「では始めましょうか。今回の依頼主は、山陰のとある資産家はん。依頼をお受けして精査したところ、お役目様のお力が必要と判断し、およびした次第どす」

伊吹はごくりとつばを飲み込む。須丸家でも解決できないというその事案。どういったものなのだろう。