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ihatov88の小咄集

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46救世主 10/3


 博士は長年の研究の成果で人間と全く変わらないロボットを開発した。名前はマリア、外見上は美しい成人女性と何ら変わらない。自ら考えることができ、見たもの、聞いたもの、すべてを記憶することができそして自らの意思で判断をする。さらにロボットだけに人のレベルを
超えた正確無比な考えでかつ失敗しない、利権と私利私欲のために弱者を食い物にする権力者に代わって世界を救ってくれるだろうとそんな研究者有志の融資を募って秘密裏に開発しついに完成し、あとは電源を入れるのみとなった。

「さあ、緊張の一瞬だ……」
博士は助手に対し、ロボに魂を吹き込むように指示した。

   スイッチ・オン!

 電流という血液がロボの回路に流され実験台に横たわるマリアが目を覚ました。
「おお、素晴らしい!」思わず博士と助手は言葉が漏れた「これが、世界を救うのだよ。この汚れきった世の中を――」
博士はマリアの前に立った。
「どこをどう見ても人間だ、これがロボットなど誰も分かるはずがない」
そう思いながら博士は自分が生みの親であることを説明した。彼女のへその緒ともいえるコードを切る前に博士は言った。
「これから、今の世界は悪が蔓延っておる、お前の力で汚れ無き世界に戻してくれんか――」
 マリアは人間とかわらない仕草で頷き、少し考えてから博士の言葉に答えた。

  「分かりました。それではすべての人間を絶滅させて見せましょう」

 博士と助手はマリアにつながれたコードを外すことなく電源を落とした。そして自らの手で世界を救う方法を模索することとした。
「残念ながら開発は失敗のようだ」
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔