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ihatov88の小咄集

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50ホッとした?話 10/23



 祭での事。近所の神社は秋祭りで大騒ぎ。御輿が町を行脚すれば、境内は屋台で賑わう。
 
 そこで見たのですよ、この目でしっかり。

 並ぶ屋台の列の中心、そこから漂ういいニホヒ。卵と小麦粉が混ざって焼き上がるあの匂いですよ。そこには黒山の人だかり。
 何を焼いているのか人ごみで見えないのですが、屋台の屋根ののれんでわかる。

   「妖怪カステラ」

 そうですか、今チビッ子に話題のあれですか。匂いからすると私の記憶ではそれはベビーカステラというものです。
「では子供たちにお土産でも……」
と思うもまさに話題のキャラクター。並ぶ人たくさんで前に行けないのです。匂いはするのに何を焼いているのかサッパリわからないのです。

 喜んで「妖怪カステラ」を買って帰る客。良く見たら袋の模様が今話題のそれなんです。ここで私はいけないことを思ってしまったのです。「もしかして、それって袋だけがそれなのでは」
 だとしたらそれはぼったくりだ。話題になってからそう日が経ってないのでそんなベビーカステラあるはずがない、ひょっとしたら電気を発する黄色のネズミか青いタヌキみたいな猫の形をしているかもしれない。それだったら詐欺やないかい!

 ……といってる内に列は進み屋台の前に到着。
「おっちゃん、いくつ買いますのん?」
屋台の鋳型を見たら今話題のあの妖怪でした。作る人も頑張ったんやね。ホッとしました。

「じゃあ、一つ……」
「800円ね」
「……高ッ!」
やっぱりぼったくりやんか。

作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔