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萌葱色に染まった心 2

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 ものの十分足らずの間に、男はその少女を――人であったもの――をきれいに平らげた。地面に広がる鮮血以外、まるで痕跡を残していない。そう、骨一つ残らず。男は満足げに笑みを浮かべると、夜の闇に消えていった。

「昨夜も、鬼が現れたというのか?」
 声を荒げ、狭山和人は叫んだ。この組織のリーダー格である。報告にやってきた永岡志穂は驚いたが、すぐに冷静さを取り戻すと、淡々と報告を続けていく。彼が鬼に不快感を覚えるのはいつものことだ。むしろ、彼のこの反応は、彼らしさを象徴している、
「ええ。西区の裏路地で血痕と思われる痕を発見したと、住民から報告がありました。おそらく、鬼の仕業だと思われます」
 鬼という単語を聴いた瞬間、男は不愉快そうに眉をひそめた。何度聞いても嫌な響きだ。
 バン!
 握りしめた拳を力いっぱい机に叩きつけた。怒りに震えているのだろうか。背中をかがめたまま、和人は微動だにしない。志穂はもう驚いてはいなかった。和人が鬼に対する反応は、少し過剰だと思っているが、それはいつものことだ。きっと、被害者を救えなかったことに怒りを覚えているだけだろう。いつも、志穂はそう思って納得することにしていた。
「だとしたら、まだ近くに潜伏している可能性があるな。警戒を怠るなと伝えておけ」
 不意に顔を上げ、怒鳴るような剣幕で和人は叫んだ。
「はい、わかりました」
 和人は志穂が退出するや否、机の上のカップを壁に向かって投げつけた。机の上にあった透明の液体の入ったガラス瓶を取ると、蓋を開けて口許に持っていく。グイッと瓶を持ち上げ、瓶にそのまま口をつけた。内容量は三五〇ミリリットルほどの小さな瓶だが、一気に飲み干した和人の顔は、ほんのりと赤みがさしていた。中に入っているのは酒だった。イライラしているときには、酒が一番のストレス解消方法。和人は酒に逃げているのかも知れない。
「鬼。必ず、奴らを殲滅してやる」
 その瞳は復讐に満ちあふれていた。

 司令室を出た志穂は自室に戻った。和人に報告・提出する書類の作成のため、明け方に部下から内容を聞いて以来、ほとんど眠ったいない。もう夜の十時になろうとしている。明け方からかれこれ随分と長い時間起きていることになる。