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【超短篇】若い 凶手

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「私?私は…」
なんだろう

…そう 私は


「あなたを消し去る者」


すると一瞬の間を置いて、しわがれた声が冷えた空気を震わせる。「お前は己の判断で、儂を消そうというのか」
静かな声。
「影は、決して独りでは立たない」
「虚しくはないか。他人の為に己の手を穢し…何か変わったか?」
月光が入るだけの暗い部屋なのに、老人が目だけを鈍く光らせてこちらを見据えているのが分かる。起き上がろうとはしていない。
私は寝台から少し離れた位置にいるというのに、突き刺す視線は強かった。
見れば全てが分かるかのように。
私は何故、こんな問答をしているのだろう。
今晩中にこの人物の息の根を止めてしまわなければならないのだから、こうしているうちにさっと喉笛を一突きすればいい。
「…さあ。」
私は何故、声を震わせているのだろう。
「それでも儂を殺すのか。この死が些細な変化しか産まないと知りながら…。ただ無駄に血を流すのか」
凶器を強く握り締めた。
「本当にそれが、正しいと思っているのか?」
畳み掛けるような問いに耐えきれず、私はいつの間にかドッと弾かれるように老人に近づき、布を口に押し付けてその喉元を刺していた。
暗殺具を引き抜き、もがき苦しむ老人の姿を見下ろす。
恐ろしい程に迷いの無い、一撃だった。
手は震えだしていた。


老人は事切れた。

それから、ひたすら何も考えないようにして屋敷を出た。

ーーーーー

月が満ち、夜道を照らす美しい夜。馬に揺られ、蹄の音をほのかに響かせ、若い凶手は闇に同化するように纏った黒布をなびかせる。
作品名:【超短篇】若い 凶手 作家名:はも