小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ポニーテールにシュシュ

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 
「ポニーテールにシュシュ」



ポニーテールのシュシュは桜色をしていた。
マクドナルドで水島隼人の座席の前に座っている女性は25を過ぎたくらいだろうか、無心にパソコンを打ち込んでいた。
後ろ髪を束ねた彼女がお代わりのコーヒーを注文しに席を立った時、画面には見慣れた隼人も利用しているSNSが見えた。そして悪いと思ったけど、ハンドルネームを見てしまった。

彼女はエッグマフィンとコーヒーのコンビを黒いトレーに載せて戻ってくると、先程と同じく隼人に背中を向けた姿勢でまたパソコンに向かい、食べながらキーボードを打ち出した。
薄い春のセーターをぴったり体にフィットさせて、体型を晒しているのは彼女がプロポーションに自信があるから選んだのだろうか。バラエティ番組で体型の点数を付けられたとしたら85点は貰えるだろう。なかなか魅力的だった。
隼人は彼女のブログを探した。検索一発で目の前の彼女に辿り着いた。
ハンドルネームは「みさき」 男性か女性かわからない中性的なネーミングはどういう意味を持って付けたんだろ。

みさきはブログの中では奔放な女性だった。「エロは地球を救う」なんて、とても見た目とは、いや、まだ後姿しか見てないが、この女性がそんな事を書いてるなんて、ごめん、悪いけど、こっそり知ってしまったと隼人はほくそ笑んだ。
ブログってのは匿名で顔が見えないから本音を書ける部分が多々ある。だから親しい友人にもハンドルネームやSNSを利用してる事なんか秘密にしておくびにも出さない人はたくさんいる。隼人だってそうしている。
日本人は恥ずかしさを隠そうとする傾向がある。本音を正直に言えない体質だ。SNSの世界では結構辛らつな言葉も恥ずかしい言葉もずらりと並んでいる。そして本音か嘘かわからない曖昧で確認出来っこない責任所在の無い言葉が並んでいるのが事実だ。
顔が見えないから、日頃思ってる本当の事やまったくの嘘も書ける、匿名だからこその特殊な世界でもあるのだ。

隼人がみさきの日記で知り得たのは独身、OL、ピアノを弾いている、ノラ・ジョーンズのファン、そして読み進める内に「私の内緒のエロイ部分」の中で右手の薬指を噛まれるとぞくぞくしちゃう・・・という告白を知った。本当なのかどうかわからないけど隼人の興味を惹いた。
彼は少し体を右に寄せ、前にいる彼女の薬指を捜す。パソコンを叩く指先が見える。薬指は少し伸ばしたままが癖なのか、キーボードを叩かずピンと伸ばしたままだ。ふ~ん、あの指ね。
悪い気がしたけど、こうやって覗き見して比べることに隼人は興奮した。
今更、おたくのブログ読んでるんですけど・・・と言えやしない。
こっそり秘密を知った後ろめたさと、色香が漂う女性の魅惑を断ち切る事が出来なかった。
自分だけが知ってるあなたの秘密・・・非常にいやらしいのだけれど、背徳感は時に快楽の一種となる。
昼下がりのどこにでもあるマクドナルドで隼人は他人の秘密を知ってしまった。
まさか後ろの男が私をストーカーしてるなんて彼女は思わないだろう。
ごめん、なんだか興味が湧いて・・・本当にごめん、隼人は軽い気持ちでうわべだけの懺悔をした。