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田 ゆう(松本久司)
田 ゆう(松本久司)
novelistID. 51015
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みちくさ(前編)

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みちくさ(前編)

(1) またゾロ逃避癖が騒ぎ出したか 
 逃避癖?そんなものが本当にわが身に備わっているのかも確かでないが、辛抱を知らない飽き性であることは間違いない。なにも些細なことを言っているのではない。人生の転機になるようなことも前後不覚にやってしまわねば気がすまないそういう性格をどうやら持ち合わせているらしい。それが人生に禍根を残すこともあれば都合よくうまく回ってくれることもある。
 終の住み処と考えたこの地にも浮き足立ってきたようだ。もう若くもないし病的にも爆弾をかかえている。なにも慌てなくてもお迎えが来て西方浄土に行けるではないか、そう勝手に思うこともある。しかしいまこの地を離れるわけには行かない、やっておかねばならないことがある。たぶん人生最後の闘いになるはずだ。

「大学時代、農学部附属農場のヤギにタバコを一本やった。翌日からヤギの姿が見えなくなった。しばらくして、解剖して死因を調べているという噂を聞いた。そんな馬鹿な!しかし・・それ以来俺の逃走癖が始まった。」

(2) 町長選挙に出馬して
 敗戦の将、語らずと言うが最後に評価をしておくことが私の務めと考えた。まず「票の少ないことを恥とせず、信念を貫かぬことを恥じる」という、私を衝き動かしてきた気持ちは今も変わらない。私に与えられた一票の重さは紙のそれではなく、金の重さに匹敵する。それはこの町の転入者に立ちはだかる血縁・地縁の壁を乗り越えて与えられた一票だからである。
 首長はある地域の代表者ではない。地域間競争の結果選ばれた者では本来の町政改革はできない。今回の選挙では私は後援会組織をもたず、ごく身近な支援者だけのいわば手作り選挙を心掛けた。そのため真剣に選挙をしていないのではないかという批判も受けたが、それは勝つための選挙戦を意味し政策で戦うという姿勢ではない。確かに私は選挙下手である。しかし、選挙とは本来、候補者の政策について住民の審判を問うものであるはずだ。そういう意味では私が訴えた合併慎重論は住民に支持されなかったけれども、この訴え、考え方は住民に広く浸透したはずだ。またそう信じている。結果として合併ありきの流れを変えることはできなかった。住民は関市との合併を望んだのだ。私はこれでもいいと思っている。それは合併支持に対する住民の責任が明確になったことを意味する。合併後の町がどのように変わろうとも、自己決定・自己責任の原則は貫かぬかなければならないのである。
 今回の出馬に対して、勇気があると激励されたことや、武儀町のことを何も知らないと批判されたこともある。まったくその通りだったかもしれないが、これでよかったと思う。合併を住民に問わなかったならば後悔するに違いない。今後は住民の一人として厳しい町政の手助けをし、地域貢献を果たしていきたいと思う。