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最後の雪~天国のあなたへ、今~

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その瞬間 雪が降っていた
 あなたは ひらひら舞う花びらのような雪をじいっと見上げていた
 よくよく気をつけて見れば
 あなたの横顔には消え去ることのない哀しみが滲み出ていたであろうのに
 私は それに気づいてあげられなかった
 
 誰か好きな男性がいたのか
 学業での悩みがあったのか
 
 いつも明るいあなたが時折見せる哀しみを
 私は見逃していた
 その頃 私たちは誰よりも近く仲の良い親友だった
 
あの夜 あなたは降りしきる雪を見上げながら
  何を考えていたのだろう

  風が吹く度に花びらのような純白の雪がくるくると舞い踊り
  それはそれは美しい
  この世のものとも思えない光景だった

あれは あなたと見た一瞬の美しい夢まぼろしだったのだろうか
  風に舞い流される白い花びらの雪片が
  外灯に照らされて 漆黒の闇に咲いた白い華のように浮かび上がっていた
  
あの数日後 あなたは一人で逝った
  二十年の短すぎる生命の終わりに あなたは何を見たのだろうか
  あなたがその瞬間 目にしたものが
  あの夜 私たちが見た美しい光景であるように願う私がいる
  誰にも何も告げず ひとことの書き置きも残さずに
  あなたは春の光に照らされ溶けゆく雪のように
  私の前からいなくなった
  自ら生命を絶たなければならないほど
  何があなたを苦しめたのか
 
あれから気が遠くなるような日々が 私の上に雪のように降り積もった
  今でも 雪の舞い踊る夜は 私はあなたを思い出さずにはいられない
  側にいながら何も気づいてあげられなかった不甲斐ない友でしかなかった私を
  どうか 許して
  
今年は雪が珍しくたくさん降った
  友よ 私の中のあなたは二十歳の頃のまま
  今でも眩しい笑顔で私に微笑みかけている
  あなたをずっと忘れないと言っておれたお父さんも去年亡くなられたと聞いた
 
これからも雪が舞う度 私はあなたを思い出すだろう
  あなたと一緒に眺めたあの年、最後の雪を-