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ゾディアック 10

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その瞬間、暗黒の煙が沸き起こり、ユシュリの背中を覆い包んでいくのが見えた。
その暗闇は・・ 後部座席で私と共に談笑する ミツコから放たれていた。

バッ!再び眩しい光と共にビジョンは消え、実家のユシュリの部屋に戻った。
「 私も出来る事はするわ。家族ですものね 」ミツコは笑って、さっきと同じ言葉を繰り返した。
「 ユシュリは・・ 私が守る 」私はニヤリとして言った。
「 光を取り戻す・・ 昔の約束でね 」

チリーン・・ ミツコの足元に小さな玉が転がり
拾って見ると、あの飾り紐の付いた綺麗な鈴だった。


~ 70 ~

 手に結ぶ
   水に宿れる 月影の
    在るか 無きかは
     うく世ぞ在りけれ


――― 月は心・・ 魂を映す鏡・・ ―――


「 ねえ、マリオンさん・・ お母様はまだ夢枕に現れて? 」ミツコが聞いた。
「 夢には見なくなった 」私は言いながら 幻視には現れるけど・・心の中で呟いた。

「 ユシュリさんは・・ 何かに憑依されてる気がするわ 」ミツコは言った。
「 そう・・ 」アンタに。ミツコを見ると 私の眉間にクルクル・・と光る菱形が現れた。

「 たぶん・・ タクシーの運転中に不浄霊の憑いた客でも乗せたのね 」
ミツコの肩から黒い闇が広がっていくのが見えた。

ザワザワ・・ ザワザワ・・
クスクス・・ クスクス・・

「 不浄霊といえば・・ 私も一匹、未浄化の霊体を飼ってるよ 」私は笑った。
「 まあ、本人は生きてるから 厳密に言えば、そいつの前世だった時の少女の霊体だけどね 」
ミツコはあっけにとられた。
「 金髪の可愛い女の子で、毎晩 人形遊びにやって来るよ 」私は言った。

「 やはり・・ 見えぬ者が見えるんだね? 」ミツコが低い声で呟くと同時に
暗黒の闇が まるで、獲物を見つけたように私に迫って来た。
ガーーーーーーッ!!! バッ!
激しいフラッシュバックと共に、前世のビジョンが蘇った。

アヤツヲ イカシテハ オケヌ
ミツケダシテ・・ コロセ

犬の鳴き声がして、ユシュリと私の隠れていた 野守りの小屋は見つかり
そして ------------

手を繋いだ 小さな屍は、やがて消え・・ 全ては土に還って行った。
包み込むように森と草むらが広がり、鳥が鳴いた。

「 ねえ・・ マリオンさん、これって何だと思う? 」ミツコの声と共に
前世のビジョンは消えた。
「 突然現れたの・・ 何だかアルファベットの古代文字のような 」ミツコは太腿を出して私に見せた。
そこには、記号のような文字列が 刺青のように浮かび上がっていた。


キーーーン・・耳鳴りと共に 眉間にクルクルと光る菱形が現れた。

「 ラメド・・ ヌン・・ ヘー・・ サメフ・・ 」私の口から、誰かが言った。
「 解るの!?何て意味? 」ミツコは食い入るように私を見た。

「 ラメド・・ ⅩⅠ正義。理性と本能、精神と物質、対なる物とのバランスを促し
行動による審判の結果 まいた種を刈り取る、魂の純化。
ヌン・・ ⅩⅢ死神。葬られた過去を思い出し 今蘇る。
本質的な状態の光が、おまえを今、ここに生かし思い出させている 」
私の口からヤツが・・ ルシフェルが言った。

「 マリオンさん、何を言ってるの?
おまえは一体・・何者だ 」ミツコが怯えながら言った。

ヤツは続けた
「 ヘー・・ⅩⅧ 星。無償の愛、与え続けることの意味。シリウス・・ 運命。
サメフ・・ ⅩⅣ守護天使。これからは、人ではなく アセンデットだけを相手にして・・
それが 極なる者とに自ら、内にバランスを取り戻す 」ニヤリとして言った。

すると、目の前に幻視が現れた。黄金の翼を持つ天使が
2つの杯を持ち 杯から杯へ生命の水を移し替えながら、
片方の足は大地に 片方の足は清流の中に漬けていた。

ヤツの顔は見た事があった・・身体は 微細な光の粒子に包まれ
陽炎のように風に揺らめいた。
そのオーラは・・ 背中から天に向かって長く伸び 眩しい白金の翼だった
顔がルシフェルと瓜二つ。

ルシフェルが月光なら、彼は朝陽のように眩しい太陽の光
青い空を背景に 光り輝く天使の名は・・ ミカエル。

「 人生の重大な局面を迎えています。どんな危険や不安にさらされても、
彼らはやって来てあなたを助け護る。白い光に身を包み高次だけを相手にして 」
天使は私に言った。


~ 71 ~

ブロロローー・・ トラックの音がして、ユシュリ達がやって来た。
階下で、引っ越し屋と親父が何か揉めていた。

「 その部屋へタンスを 置いちゃいかん・・ 床の間が 」
「 ああ、置いていいですよ。荷物多いですからね、じゃんじゃん置いちゃって下さい 」
私は、重いタンスを持ったまま困っている引っ越し屋に笑顔で言った。

「 マリオン!勝手な事を言うな、おまえは・・ 」親父は激高した。
「 親父・・ 怒ると血圧が上がるぞ。所帯が越して来るんだ、置き場所なんか言ってる場合か 」
私は親父の肩をポンポン、と軽く叩いた。
親父はワナワナ していた。

昔からそうだった。私は家族の中で唯一、封建的でワンマンなこの親父の言う事を一切聞かなかった。
背後の階段から、その様子をミツコが目を細めて見つめていた。

ザワザワ・・ ザワザワ・・

何かが・・ 蠢き囁く声がした。

「 やあ、皆 忙しい所すまないね、ありがとう! 」
ドアが開いて、風と共に ユシュリが入って来た。

「 ユシュリ、久しぶり・・ 大丈夫か? 」私は言った。
「 ああ、マリオン今回は世話になったな。まあ・・何とかなるだろ 」
ユシュリは爽やかな笑顔で答えた。
「 相変わらずだな・・ 」私は可笑しかった。

どんな状況でも ヤツは平然と穏やかにしていた。
優美ささえ感じる。
ある意味、熾烈な企業の競争社会には向いていない気がした。

ユシュリ・・ オカエリ

風に乗って、母の声がした。


翌日、店でミオナが声を掛けて来た。
「 マリオンさん、昨日大変だったんですよ! 」
「 ミオナ、私も大変だったよ・・ 」私は引っ越しで、親父とのバトルに少し疲れていた。

「 まあ、マリオンさんも?それが、昨日映画を観に行ったんですけどね
途中で火災警報が鳴りだして、暗がりの中を観客皆で並んで避難したんです 」
「 へえ、映画館で火事?大丈夫だったの? 」私は聞いた。

「 それが、誤報だったようで、あそこに隣接する美容院が原因だったみたいです。
暗い階段を避難してると、何故かカラスの黒い羽根が落ちてました 」ミオナが言った。

「 まるで ヤタガラスだね。闇の中でもいち速く飛んで行く者の先を導くという。
どんなに見えない意識の闇の中も 概念に摑まらずに・・ 」私は 女神島の闇の戒壇を思い出した。
「 何の映画を観に行ってたの? 」ミオナに聞くと

「 オリジナル遺伝子のヒロインが、遺伝子感染して増えたゾンビと戦う映画です 」ミオナが言った。
「 凄いの観るんだねミオナ。ゾンビって、心を失ったマインドみたいだ・・ 」私はハッとした。

ミオナは高次からのメッセンジャー、ガブリエルの媒体だった。
作品名:ゾディアック 10 作家名:sakura