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善行為

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僕はドアを開けて部屋に入った。
今日は彼女の家の、彼女の部屋で、彼女と遊ぶ約束をしていたのだ。
しかし、部屋の中に彼女はいなかった。
僕は部屋にの中に入って、彼女の帰り待つことにした。
ドアを閉じると、僕はその必要はないことに気がついた。
彼女がドアに押しつぶされて死んでいたのだ。
「なぁんだ。君はドアのすぐ向こうにいたんだね。ちっとも気が付かなかったよ。それにしてもこんなに血をドバドバ流しちゃって……。せっかくのきれいなお部屋が台無しだよ。僕がお掃除してあげる」
僕は彼女の部屋を出て、物置へ向かった。
以前、この家で彼女の母親を撲殺した時にも掃除をすることになったので、掃除用具が何処にしまってあるのかは知っていた。
僕は物置からモップとバケツを取り出し、お風呂場へ向かう。
お風呂場の鍵は閉まっていた。
「そうだったそうだった。前に僕が彼女のお父さんをこの中に閉じ込めておいたんだった。ちゃんと死んでいるか確認しなきゃね」
僕はキッチンへ行き、ナイフを取り出して自分の右手の平をざっくりと切った。
埋め込んでおいたお風呂場の鍵を右手の平から取り出すと、僕は手を洗ってからお風呂場に戻った。
開けた瞬間、中からとんでもない異臭がしてきた。
浴槽を覗きこむ。
「よかった、ちゃんと死んでるよ。夏だから腐るの早いんだなぁ……」
僕はそう言いながら、シャワーから水を出して、バケツに水をためた。
彼女の部屋に戻り、彼女の死体をお風呂場に移動する。
「さて、お掃除お掃除」
彼女の血は、案外頑固にへばりついて、簡単には落ちなかった。
「血は飼い主に似る……」
頑固にへばりつく彼女の血を、モップでごしごししながらぽつりとつぶやく。
やがて、彼女の部屋はいつもの美しさを取り戻した。
僕は掃除用具を物置にかえして、リビングに向かった。
タンスの引き出しからライターを取り出す。
そしてガレージに向かってガソリンをとってくる。
以前、豚の丸焼きごっこで彼女の弟を焼いた時につかったので、場所はよく知っていた。
僕はひと通りガソリンを家中にまき終えると、家を出た。
みんなの死は全部僕のせいなので、みんな死んじゃった今日、僕はみんなを責任持って火葬することにしたのだ。
僕はライターをつけて、家の中に放り込む。
ぼわっ。
爆発するかのように家が燃え上がった。
「熱いなあ。やけどしちゃった」
僕は急いで家を離れる。
「こんなに燃えるんだね。さあみんな、みんなの大切な家とともに安らかに眠るんだよ」
僕は黙祷をした。
「やっぱりいいことをすると気分がいいなあ。よおし」
僕は歩き出した。
今なら新しい彼女を見つけられるかもしれない。
これで、何人目になるだろう。
わからないや。
まあ、いいか。
作品名:善行為 作家名:飛騨zip