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君のいる場所~第三章~【一話】

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【一話】


王室間_


カナデが勢いよく部屋に飛び込む。
そこには、ベッドに寝込んでいるダージスの姿があった。

「父さん…」

カナデがベッドに駆け寄る。
すると、ダージスはゆっくりと目を開け、カナデを見た。

「おぉ、カナデか…。すまんな、心配かけてしまって」

笑ってはいるが、声に力がこもっていない。
まるで、いつもの彼ではないように思える。
ベッドの近くの椅子に腰を下ろし、ため息をつく。

「ホントだよ…無理はするなっていつも言ってるじゃん。それに、もうこれで倒れたの三回目だ」

最近、ダージスは体調を崩すようになっていた。
もう年ということもあり、国中ではもうじきカナデに王位が移るのではと囁かれている。

「そうだな…だから、お前にもそれなりに心の準備をしておいてもらいたい」
「それは、つまり…」

カナデの不安そうな呟きに、ダージスは微笑んだ。

「大丈夫、心配することはない。私も最初はそうだった」

それでも、カナデの不安は募るばかり。
それも、仕方のないことではあった。
ダージスが国王になったのは、二十三歳の頃。
それに比べれば、カナデは若すぎる。
不安にならないわけがなかったのだ。

「オレは、王になったらどうすればいいのかな」

それはカナデの、前々から抱いていた疑問だった。
自分は何のために王になるのか、国民は自分が王になることを歓迎してくれるのだろか。
そう考えるだけで、不安に押しつぶされそうになる。

「お前は、お前の思う国を創ればいい。でもまぁ、私とお前は似ているから、同じ国を創るかも知れんがな」

ダージスがそう微笑む。

「似ている…」

自分では、考えもしなかったことだった。
カナデとダージスが似ているなど、回りからは言われたことがない。
何故なら、カナデは、もう死んでしまった母親にそっくりだったからだ。
だから、似ていると、父親の口から出てくるとは思わず、動揺した。

「似ていると言っても、考え方がそっくりなんだよ」
「考え方?」

そう言われれば、思い当たる節もある。
小さい頃、外に憧れを抱いていたカナデ。
ダージスと出掛けるときはいつも馬車で移動していたが、窓にはいつもカーテンが掛かっている。
隣国の「シガン王国」でのあの事件以来、カナデは極力外への好奇心を表に出さないようにした。
それは、カナデにとっての気遣いだったらしい。
自分が外に出てってしまえば、周りに迷惑が掛かってしまうと自覚したからだ。
だから、外に行きたいという思いを無理矢理押さえ込み、これまでを過ごしてきた。
だが、いつもその気持ちに気付いてくれたのが、ダージスとアリサだったのだ。
馬車内では、ダージスはカーテンを少し開けて外を覗かせてくれた。
城内では、アリサが一番外に近づける場所だと言って屋上に連れて来たりしてくれた。
いつも、自分の気持ちに気付いてくれる。
それが、カナデにはとても嬉しいことでもあった。

「だから…」

ダージスが、少し険しい表情になる。

「お前がまだ、外に行きたいと思っていることも、分かるんだ」
「!」

カナデは驚きで目を見開いた。
自分の、心のどこかに押し込めていた感情があふれ出てとまらない。

「そう、か…。オレ、まだ…」

ふっと、笑みをもらす。
あの輝いて見えた景色が脳裏によみがえる。
今でも、鮮明に覚えていた。

「…自分の気持ちに、嘘はつくなよ」



王室間前_


アリサはそこで、息を呑んだ。
まさか、ダージスがカナデのあの気持ちを掘り起こしてしまうとは。
予期していないことが起こって、アリサは動揺を隠せずにいた。

「カナデ様、貴方はまた、遠くへ行ってしまわれるのですか…?」

誰にも聞こえないような声でアリサは呟いた。