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アナザーワールドへようこそっ!  第二章  【023】

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  【023】



 理事長室でのカルロスさんとの話を終え、俺とシーナは教えられた自分たちのクラス、『Aクラス』へ向かっていた。


 理事長室は、『職員棟』という先生や、この学校(アカデミー)で働いている職員らが利用している建物で、生徒らが授業を受ける『教育棟』とは別の建物となっている。なので、先ほど、俺が『神通具現化(ディバイン・フォース)』で地上から浮遊させた『職員棟』は、生徒たちが利用する『教育棟(通称:本館)』とは独立した建物であったので、生徒たちには特に影響はなかった…………はずである。


 さて、ここ……『王立中央魔法アカデミー(セントラル)』は、他の地区よりも豪華でかつ立地面積も広く取られているようで、『教育棟』と『職員棟』とはだいぶ距離がある(おそよ500メートルほど)。

 ちなみに、この学校……どれくらい広いかと言うと、まず『校門』から『教育棟(通称:本館)』まで直線距離で500メートルほどあり、あと、『体育館』と『グラウンド』が校内に2つもある。

 そして、この学校(アカデミー)は『全寮制』であるのだが、その寮の建物もこの校内に存在している。場所的にはこの『職員棟』を間に挟んで、左側が『女子寮』、右側が『男子寮』となっている。ちなみに、この『職員棟』から『寮』までの距離もおよそ500メートル以上の距離があるので、ある意味、プライバシーは保たれているのかも……という感じはした。


――て言うか、広すぎて引きました。


 入学式で出会った『フレンダ・ミラージュ』という女の子が確か『名門貴族』とか言ってたけど、もしかしたらこの学校(アカデミー)はそういう貴族みたいなお金持ちがいっぱいいるのかもしれないな。だって、こんな『無駄に広い敷地』とか『無駄に豪華な建物や設備』とか、いかにも『お金持ち』が好きそうだもんなー、見栄とかすごそうだし……。

 と、隼人は自身の『貧乏性』全開で、学校(アカデミー)の規模を受け入れようとしていた…………擦れ気味に。



 さて、俺とシーナは今、職員棟から出て、教育棟(通称:本館)に向けて歩いているのだが、ここで俺はいくつかの疑問をシーナにぶつけた。

「シーナ……」
「ん? なんだ?」
「お前…………『神通具現化(ディバイン・フォース)』はこのアナザーワールドでは使えないんじゃなかったのか?」 
「……」

 俺は、シーナにストレートにそのことについて聞いた。

 俺に言ったのはウソだったのか……どうしてウソをついたのか……それをすぐに知りたかったからだ。

 そして……、

「……ああ、使える」

 シーナは淡々と答える。

「じゃあ、俺に使えないと言ったのはウソだったのか?」
「……まあ、そういうことになるな」
「ど、どうして……ウソなんか……?!」

 俺はシーナが簡単に『ウソをついていた』ことを認めたのが、なぜだか…………すごくムカついた。

「……怒っているのか?」

 シーナが静かに問いかける。

「べ、別に怒ってなんか………………ああ、怒ってる、怒ってるともっ! 当たり前だろっ! この世界(アナザーワールド)での唯一のパートナーであるお前が、そんな簡単にウソつかれるとなー、何か知らないけどムカツクんだよっ!」

 俺は、シーナに、今、感じている想いをぶつけた。

「……すまない。悪かった」
「どうして…………どうしてなんだよ?! どうして、『使えない』なんてウソなんか……?!」
「……」

 シーナは一旦、黙り少し考えてから、口を開く。

「それはな…………わたしの『神通具現化(ディバイン・フォース)』には『回数に限りがあるから』なんだ」
「!?…………回数に、限り?」
「……ああ。わたしがこの世界(アナザーワールド)で使える『神通具現化(ディバイン・フォース)』の回数は5回だけだ」
「……5回っ?!」
「ああ……。だから、この力はめったには使えない。だから、本当はさっきも使う予定ではなかったんだ。だが…………お前がリサにデレて気が抜けてしまい、建物が落下したため、仕方なく、『神通具現化(ディバイン・フォース)』を発動させたのだ。つまりだな…………お前のせいだということだ」
「…………えっ?」


 あれ? 何か、話の流れが、おかしな方向に、流れているよ?(いっこく堂風)


「いいか、もう一度、言うぞ…………お前がっ! リサとっ! デレデレして気を抜いたからっ! わたしがっ! 仕方なくっ! 神通具現化(ディバイン・フォース)を発動させるっ! ハメになったのだぞっ!」

 と、シーナは俺の額に人差し指をツンツンやりながら、説教してくれました。

「ご、ごめんなさい……」

 俺はシーナにただただ謝った。

「……ふう、まあいいさ。終わったことだ。結果的にリサを味方につけることができたんだからな。それに……」
「?…………それに?」
「隼人に……じゃなかった、お兄ちゃんに、これからまだ説明していなかった『力の使い過ぎについての注意点』を話すにもいい機会にもなったしね」

 シーナは今、自分たちが校内で会話していることに気づき、『妹キャラ』へと戻った。

「……『力の使い過ぎについての注意点』?」

 そういえば……あったな、そんな話。

「うん。お兄ちゃん、今、右手の甲にある『六芒星』を見てみて?」
「?……あ、ああ」

 そう頷くと、俺は自分の右手の甲の『六芒星』を見てみた。すると、


「あれ? 最初よりも、かなり、色が薄くなっている……」


 俺の右手の甲にある『六芒星』は、昨日と違い、濃い青色だった光が、淡い青へとかなりボヤけて弱々しく光っていた。

「前にも話したけど、この『六芒星』が薄くなったら『神通具現化(ディバイン・フォース)』の力を使うのはやめて、て言ったよね? 理由は……お兄ちゃんの『媒介役(メディエーター)そのものを消し去ろうとする力』が働くからだって」
「ああ、聞いた、覚えてるよ。でも、その『媒介役(メディエーター)そのものを消し去ろうとする力』っていうものの説明はまだだけどな……」
「うん……この『媒介役(メディエーター)を消し去ろうとする力』っていうのがね、さっきのリサの態度が一つのヒントになっているんだよ?」
「?!…………リサの?」

 どういうことだ?

「お兄ちゃん……覚えてる? お兄ちゃんが『媒介役(メディエーター)』になるために支払った『代償』のこと」
「……『代償』? ああ、確か……俺の中の『五大欲』の中から『性欲』を封印するっていうアレだよな?…………確か、『色欲の封印』だっけ?」

 まあ、勝手にお前(シーナ)に、決められたんだけどな。

「そうなの。この『色欲の封印』とは簡単に翻訳すると、『お兄ちゃんがこの世界(アナザーワールド)で恋愛をしてしまうのを禁止・封印するもの』ということになるの」
「…………えっ?」


 おいおい、また、サラッと重要なことを言ったぞ?

 何だって? 恋愛禁止? 封印?

 誰が?

 えっ……俺?

 まったく訳がわからないよ。

 お前は『キュウ……』、いや、やめておこう。


 とりあえず、シーナの話にそのままを耳を傾ける。