小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

君のいる場所~第二章~【六話】

INDEX|1ページ/1ページ|

 
【六話】


地下牢_


サキにエミリアの居場所を聞き出し、そのままジル王国の者に見張りを頼んだ。
途中の廊下でカナデとアリサに会い、床に倒れ気絶しているマリナを見たとき、流石のルイも驚いた。
ダージスの後を追うようについて行くルイ。
カナデとアリサは安全な場所で待機させてある。
だから心配することもなく地下牢へ向かっていた。
地下牢の扉の前へ到着し、ダージスが扉を押し開ける。
中は真っ暗で、日の光も差し込まない静かな場所。
こんな所に、エミリアが閉じ込められていると考えただけで、ルイの胸は痛んだ。
すぐ隣に置かれていた蝋燭に、マッチをすって火をつける。
それに反応したかのように、何処かで鎖のじゃらりと言う音が聞こえた。

「…エミリア、いるか?」

ダージスがそう呼びかける。
すると、また鎖の音が聞こえた。

「そのお声は…ダージス様ですか?」

控えめで、とても小さな声だが、透き通ったキレイな声が二人の鼓膜を揺らす。

「そうだ。エミリア、何処にいる?」
「…真ん中の牢屋です」

警戒を緩めた様子の声が聞こえ、二人で真ん中の牢屋に近づく。
そして、中を照らすように蝋燭を牢屋に近づけた。
そこにいたのは、鎖に繋がれやせ細った身体の女性。
成長はしているが、昔の面影がまだ残っている。
だからルイは、それがエミリアだとすぐに分かった。
エミリアはゆっくりと顔を上げる。
そして、ルイを見て目を見開いた。

「…ルイ?」

力のない声が、確かに「ルイ」と呟いたのだ。

「そうです、ルイです。僕のこと、覚えてて下さったんですね…?」

ルイは薄く笑みを浮かべながら言った。
エミリアは優しく微笑みながら、懐かしむように言葉を紡ぐ。

「当たり前でしょ、貴方を指導してきたのは誰だと思って」

五年前の思い出が、次々とよみがえってくる。
エミリアの瞳には、いつの間にか涙が浮かんでいた。
ダージスが牢屋の鍵を開けルイを中へ促す。
ルイがゆっくりと中へ足を踏み入れる。

「そうですね…。僕は、ずっと、貴女に会いたかったんですよ」

エミリアに近づきながら、小さく呟く。
その言葉に、嬉しそうに目を細めるエミリア。

「私も、会いたかった…」

エミリアに繋がった鎖を解き、ルイはやせ細った身体を抱きしめた。

「でしたらもう、黙って何処かへ行ってしまわないでくださいね」

弱々しく、だがしっかりと、ルイを抱きしめ返す。

「えぇ、もう、何処にも行かない。ずっと一緒…」



広間_


広間では三人が縛られ座っていた。
フランとマリナはまだ気絶しており、サキは涙を流し、心配そうに二人を眺めている。
そこへ、ダージスとルイが帰って来た。
ルイは一人の女性を抱えており、アリサにはその人がエミリアだとすぐに分かった。

「すぐに食料と水を用意しろ、それから、暖かい毛布もだ」

ダージスが同行してきた騎士にそう呼びかける。
騎士たちは慌ただしく行動し、食料などを持ってきた。

「エミリアさん、立てますか?」
「うん、大丈夫、ありがとう」

アリサは改めてエミリアを見る。
とてもキレイな顔立ちで、品もあり、同姓から見ても魅力的な人だ。
そしてふと、アリサと目が合う。

「もしかして、アリサちゃん?」
「え、あ、はい…。えっと、何故私のことを…?」

戸惑いながらも問うアリサ。
その反応にふっと笑みをもらす。

「貴女が生まれたばかりの頃、一度見ているから。それに、とても彼にそっくりだし」

ふとルイに視線を移した。
するとルイはほのかに頬を染める。

「僕とアリサはそんなに似てませんよ」
「そっくりだよ、特に目とか、ね」

そう言って微笑むエミリア。
そんなエミリアからルイは視線を逸らす。
この反応を見たとき、アリサは確信した。
恐らくルイは、エミリアに好意を寄せている。
何故分かったかと聞かれても、きっとアリサ自身もよく分からないと答えるだろう。
ただもしかしたら、ルイの心境の変化をとらえることが出来たのかもしれない。
少しでも自分の兄のことを知れて、アリサは喜ばしく思った。
楽しそうに話す二人。
きっとエミリアも、ルイと同じ気持ちだろう。
そう思ったとき、アリサは無意識に隣で唖然としているカナデに視線を移した。

「カナデ様…?」

カナデは、エミリアを見つめたまま固まっている。
アリサはカナデの顔を覗き込む。

「カナデ様、どうかなさいました?」
「えっ…あ、いや別に、何でもない!」

誤魔化すようにアリサから目を逸らす。
カナデがこういう反応を見せるときは、大抵何かを隠しているときだ。
小さい頃からの付き合いだから、よく分かる。
だが、アリサはそれ以上詮索することはなかった。
アリサの本能が、そう呼びかけていたように思える。
ざわつく気持ちを抑えながら、アリサはカナデの横顔を見ることしか出来なかった。