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ゾディアック 8

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~ 54 ~

受容を司る聖獣像だったこの客の身体から、コーラルとディープマジェンダのオーラが現れた。
私はストーンの上に両手を添え、太ももから流し腰の中央で止まると 静かに目を閉じ 振動を感じた。
ここのチャクラには魂が座し、存在その物のパーソナリティを示す。

・・ヴォーーン ヴォーーン
ボーディ・・ ボーディ・・ ボーディ・・   
ボーディ・・ ボーディ・・ ボーディ・・  

お経のような音楽に合わせ 渦が現れ、その中心から大きな目が開いた。
「うわっ」私は驚いてストーンから手を放した。
渦は大きく旋回し、幾重にも重なり合いながら 花びらのように開いて行き
客と私の身体を包んでいった。

・・ヴォーーン ヴォーーン ヴォーーン ・・

中心から、蜂の羽音のような・・ 空気を振動させる低い音が響いて来た。
すると私の身体も客の身体も 輪郭が陽炎のように揺らいで消え
それと同時に激しい恍惚感に満たされた。
あの時と同じ、神への貢物として身を捧げ 聖獣像と一体となったミスラトの時代の・・

・・ヴォーーン ヴォーーン
ボーディ・・ ボーディ・・ ボーディ・・   
ボーディ・・ ボーディ・・ ボーディ・・ 

私の身体は微粒子の空気を震わせる「 音 」となり
振動しながら旋回し、コーラルの花びらのように開いていった
「 これは見た事がある。女神島の観音寺院にあった砂曼荼羅だ 。
あの絵はこれを現していたのか。存在の宿る場所 」

砂塵が渦巻き、鐘の臼を回すような音と共に
また あの声が聞こえて来た。

リンガー・・ リンガー・・ リンガー・・
リンガー・・ リンガー・・ リンガー・・

「 人間だけが判っていない・・ 」

私を媒体に現れる、月光の翼を持つルシフェル

「 満たすを逆に取っている
器を満たすんじゃない
光として満ちている
状態として存在するだけ

外に見えるものは 幻
掴もうとしてはいけない
光が借りている器 」

ルシフェルのかしずく
足の下には 細い三日月が光って見えた。

「 光が色(チャクラ)に分かれて
地球(肉体)にやって来た

スピリット (光) が 自分という状態を
器 (肉体) に入って体験したかったから

人は世界を愛する為に生れて来た

何千年経っても 闘争が終わらないのは
愛されていることが分からないから
愛し方が分からない!!と、
迷子が いつまでも駄々を捏ねている・・

この世界 (器) は 全てを生かしている

存在する事は もう愛されていると
同じ事なのに 」

ゴォォーーーーーーン!!!
カチ、カチ、カチ、カチ ・・・

突然、大きな鐘の音と共に、音楽が時計の歯車のような音に変わった。
第三チャクラ、アイデンティティを乗り物にして 現世におけるエゴの長い旅が始まった。

~ 55 ~

私は、ベットに上がると 客の小さな身体に馬乗りになり
腰から肩に向かってストーンを流していった。
アルマアマルの深い香りが霊気を放ちながら、
陶器のようなボディに 艶々輝き吸い込まれていく。

背中は、人体の中で長く広い面積を持つ
彼女のみぞおちの裏側は固く張り付いていた。
熱い石で何度摩っても、すぐに冷えてしまう
もう長い間ずっとそうしていたように

あの日から・・

私が宿っていた 受容を司る陰の聖獣像は
欲望と怒りに支配された 人間の激しく燃え盛るエネルギーによって
完全に破壊されてしまった。
全てと調和し循環していたポータルは完全に閉じられた。

一万年以上の長きに渡り、彼女は壊されたまま
気付き戻って来るのを待っていた。
人間が自らの受容のエネルギーを開き
内なる強さと宇宙の繋がりを意識出来る時まで

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ ・・・

輪廻の時計は回り続ける
何度でも、何百回、何千回、何万回も
遠い時の彼方から

「 時は来るもの・・ 」

時の果て高い塔の上で
ガブリエルの回すトライアングルに、七つの惑星と十二の星座が現れた。

「 横道十二宮が 意識の転生その目的とプロセスを助ける 」

横道十二宮、ゾディアック・・?
春分点は、およそ2万6千年に黄道十二宮を一周し、
2160年で十二宮の各星座を通過するといわれる。
古代文明の天文学に、
年明けの空に座す星のエネルギーによって、その時代の地球の生命は護られる。
という伝説があった。

今は地球歴2090年、湧き出でる水瓶を抱えたヴィーナスの絵で知られる
愛と自由の女神の象徴、アクエリアスの時代を迎えていた。
サラクエルと共に宿っていた
あの懐かしい受容のエネルギーが再び

カチ、カチ、カチ、カチ!!・・・

時計の音が止まり、私はストーンを客の背中から離した。
小さな身体がピクリと動き

「 ああ・・ 」
深い溜息と共に 彼女は濡れた身体をゆっくり起こした。


~56 ~

永遠が光の中で踊っている
時の狭間に
眠りから覚め微笑む
あなたは一体 誰なのか?
そして私は 何故私であり続けるのか

アイに抱かれ 語る風の歌を
時の揺りかごに 消え往きながら
あなたは何処なのか?
そして私は 何処へ進み続けるのか

同じ光で回りながら 魂は再び語り始める 


彼女は妖艶な霊気を放ちながら、ゆっくりと起き上がった・・
その姿は、3年前 8月28日月食を見た後から始まった
私の身体に異変が起こった時に出逢った、
あの黒ずくめの女とそっくりだった。

電車の中で、通りの曲がり角で、そしてサロンの客として
同じ日に 同時に違う場所で 三度現れた、同じ顔をした別人。

「 ドッペンゲルガー・・ 」私は呟いた。

あの時女は、電車で私の隣に座り
無言で私の前に立つ男性のお腹を、時計回りに摩る素振りを続けていた。
そして聞こえた

アイツノナマエハ ダレダッケ?
アイツノナマエハ ダレダッケ? 


「 ルシフェル・・ 光もたらす者 」今 目の前に起き上がった女が言った。
「 私達・・ 以前にお逢いしたが事があります? 」私は 彼女の背中にガウンをかけながら言った。

「 いいえ、でも私はあなたの感じる事が分かる氣がします 」
彼女はお腹の辺りを摩りながら言った。

あの時と同じ

「 胃腸の辺り・・みぞおちの背面が固くなっていました。胃がお悪いんですか? 」私は聞いた。
「 ええ、精神的な事で調子が悪くて・・ 人との関わり合いとか 」お腹を摩りながら言った。

第二、第三チャクラは 授容の愛と自己アイデンティティの確立を促す。
インカネーショナルスター魂の目的

「 私も、あなたを解る氣がします。あなたは・・ 」私が言いかけた時
「 リオです。良かった、今日はあなたにカードのメッセージを持って来ました 」彼女は言った。
「 私へのカードメッセージ? 」

やはり、転生の初め私が宿っていた聖獣像だからなのか・・?
今世における私へのメッセージ、アイデンティティの旅の目的を知っているのか?
私は彼女をまじまじと見ながら聞いた。

「 リオさんと同じエネルギーをした人を知っています。彼女に前世が見えた時
遙か何万年も昔 時の彼方から来る・・星のエネルギーを感じました。
作品名:ゾディアック 8 作家名:sakura