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その鳴くや哀し

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翌朝、日の出と共にレスキュー隊は地滑り現場での救助活動を開始した。地元の消防団員も応援に駆け付けていた。
レスキュー隊の隊長は重機の導入を検討したが、現場までの道路状況が悪く搬入が困難であり、また、現場の斜面が急峻なため、地滑りで埋まった県道に沿って重機を動かさなければならないが、肝心の県道が土砂の下でどのような状態になっているかわからず、へたをすると緩くなった地盤に浮いた状態になった道路が重機の重みで重機ごと崩落する危険性があった。結局、重機の導入は見送られ、手掘りで救助活動を行うことになった。
隆正が最初に現場を見たときの直感が当たっていたのだ。非常に困難な現場だった。それでもレスキュー隊員や消防団員は黙々と捜索にあたった。
その日の午後には、赤い軽自動車に乗っていた人物が特定された。
29歳の主婦と3歳になるその息子だった。主婦は息子と買い物に行った帰り道に、地滑りに巻き込まれたのだ。
結局、その日の捜索では埋まった軽自動車を発見することはできなかった。
救助隊の一行は空しく現場をあとにしなければならなかった。

翌朝、捜索が再開された。
この日は、生き埋めになっている主婦の夫とその両親も現場に来ていた。
隆正にも同じくらいの年齢の子供がいる。遠くから救助活動を見守っている3人の姿を視野に入れながら、隆正も2人の無事を祈りながら捜索を行った。
だが、この日もまだ軽自動車を発見することができなかった。救助にあたっているレスキュー隊や消防団員の疲労と共に焦燥の色が濃くなっていた。
隆正は自分たちのレスキュー隊が、電磁波人命探査装置シリウスを持たないのが悔しかった。一番近い大規模自治体の高度特別救助隊、いわゆるハイパーレスキュー隊がシリウスを所有しているため、自治体を通して貸出の交渉を行っているところだった。だが、借りられたとしても、間に合わないかも知れない。タイムリミットは迫っていた。
4月とはいえ、まだ山の夜は冷える。生き埋めになった親子は無事だろうか。隆正はこの日も重い足を引きずって現場を後にした。

作品名:その鳴くや哀し 作家名:sirius2014