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東の国の王子と西の国の王女

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 「ジュリエッタ、今宵、君に誓いを立てる」
 ジェイムズは美しい彼女を見下ろした。月の柔らかい明かりで髪が黄金色に淡く染まり、肌の繊細な血管が透けて見える。
 ジュリエッタは優しい彼を見上げた。そよそよと吹く風が髪をなびかせ、骨格のしっかりした小麦色の額に垂れかけた。
 「僕は必ず君の元に戻ってくる。そして君と、民が幸せに暮らせる国を創る。この心に一点の曇りも無い、僕らを見守るこの月に誓おう」
 「私も誓うわ。必ず貴方が誓いを守ってくれると信じ続けます。一点の曇りも無く、私たちに光を与えるこの月に誓います」
 二人は月を仰いだ。澄んだ二対の目に見つめられて、月は恥ずかしそうにほんの少し身を縮めたが、気づいた者はいなかった。
 「ジェイムズ、貴方の国は東に、私の国は西にあるわ」
 ジェイムズは喉の奥で音を鳴らした。
 「太陽は貴方の国から昇り私の国に沈む。月は私の国から昇り貴方の国に沈むわ。私たちは太陽にも、月にも愛されている。二つは互いに補い合っているのよ、きっと私たちも…」
 ジェイムズはジュリエッタを抱きしめて、彼女の頭を自分の胸に押し付け、彼女の髪に頬をすり寄せた。
 「大丈夫だ。僕がきっと、きっと幸せな国を創るから」
 ジェイムズはそのままつややかな彼女の髪を梳いた。
 明日が来るのが怖くないといえば嘘になる。相手は自分を殺そうとし、自分も相手を殺そうとするだろう。相手に恨みは無い。それどころか一体どんな生活を送っているのか、養うべき人はいるのかどうかもわからない。彼がジュリエッタを愛するように、相手にも想う人がいるかもしれない。そして死ねば悲しむ人がいるに違いない。
 もう戦はたくさんだ。身を引き裂かれて血が流れるのも、心を引き裂かれて涙が流されるのも。
 僕が変えてみせる。