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君のいる場所~第二章~【プロローグ】

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【プロローグ】



シガン王国城内_


シガン王国の国王であるフランと女王のサキに、ダージスとカナデは挨拶をしていた。

「たった一ヶ月見なかっただけなのに、カナデ君は随分と大きくなったな」

フランはカナデの頭を撫で微笑む。
その隣ではサキが満足気に笑っている。

「この調子だと、10年後が楽しみですわね。きっといい男になるわ」
「…どうも」

カナデは困ったように返事をすると顔を俯かせた。

「それはそれとダージス、この間の話、考えておいてくれたかい?」
「…あぁ」

カナデはその言葉を聞くと、少し顔をしかめる。

「うちの娘、マリナとカナデ君は相性もいいし同い年だ。まだ先の話ではあるが結婚を前提に二人の関係を深めていってもらいたい。マリナもカナデ君を気に入ってるようだし…悪くはない話だろう?」

ダージスは苦笑いを浮かべながらカナデの表情を伺う。
カナデは表情を曇らせており、いかにもこの話は嫌だという反応だ。
その表情をみたダージスは小さくため息をつく。

「フラン、君とは旧友の仲だ。君の娘と結婚できるということは非常に喜ばしいことではある。だが最終的に決めるのは私ではない、カナデだ。私も妻との結婚は決して許されたものではなかったが父は決めるのはお前だと私の判断に任せてくれた」

そこでいったんダージスは話を切った。
フランは眉をひそめ厳しい表情をしている。

「つまり、カナデ君の判断に任せると、そう言いたいのか?」
「察しがよくて助かるよ」

その答えを聞きフランはため息をつく。

「もしカナデ君が娘との結婚を嫌だと言ったらどうするんだ?」
「それはカナデの判断だ。私がとやかく言う必要はないだろう?それに、子どもの前でこの話はよくない」

その言葉で我に返ったのか、フランはわざとらしく咳払いをすると、目を細めてカナデを見る。

「カナデ君、少し外に出ていてくれないか?」

その言葉にカナデは頷くとそさくさと部屋を出て行った。



廊下_

アリサとルイは扉の外で待機しており、大体の会話は筒抜けており、状況は把握していた。
だからカナデが部屋から出てきたことにも驚きはしない。

「カナデ様、どうしました?」

ルイがカナデに、会話が聞こえていたことを悟られないよう自然に問う。

「別に…。あ、そうだ、アリサ、ルイ。オレを外に…」
「カナデ様…!!!!」

カナデの言葉を遮る形で、少女の声が廊下に響き渡った。
カナデは一瞬嫌な顔をしてそちらに振り向く。
そこにいたのは、フランとサキの娘である、マリナだった。

「カナデ様、会いたかったです!」

そう叫んで駆け出し、マリナはカナデに抱きつく。

「お久しぶりです、マリナ様…」

カナデは呆れたような声でそう言った。

「会えてとても嬉しいです!私のお部屋で遊びましょう!」

マリナはカナデの腕をぐいぐい引っ張って行く。

「あ、いやオレは今から…」
「拒否権はありませんから。あ、それからそこのお二人。ついて来ないで下さいね」

ルイとアリサにそう言い残し、カナデを連れて廊下の角へ姿を消した。
アリサはその光景を、複雑な気持ちで見送った。

「ルイお兄様…」
「…はい」

アリサは自分の胸に手を当てる。

「ここの辺が、さっきからもやもやします。…いい気分では、ありません。これは一体、何ですか?」

その言葉を聞いて、ルイは驚いたように目を見開く。
そしてふっと笑い、アリサの頭を優しく撫でる。

「僕には、分かりません。でもいずれ分かることでしょう」

アリサは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔を見せた。

「そうですね」