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殺し屋少年の弔い

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 全ての授業が終わり、さっさと家に帰ってやろうと小走りで教室を出ると、ちょうど校門に差し掛かったところで肩をぽんと叩かれた。
「山田、一緒に帰ろうよ。」
 振り返るとそこには……誰も居ない。逆方向に顔を向けると、先程の早川が居た。
「引っかかったー。」
 口をアヒルのようにしながら俺の顔を指差して笑う。どちらかというと少し癖のある焦げ茶の髪と、まるっとした目のこいつと似ている鳥といえば、鴨だが。
「無駄なフェイントかけるんじゃねえ!」
 と、いつの間にか並列して歩く早川の肩を、軽く平手をいれる。
「いってて、無駄に馬鹿力だよね山田。」
「余計なお世話だ。」
 そこでこいつの耳についたイヤホンに気付く。
「と、いうか人と話すときくらいイヤホン外せ。」
 早川のマフラーから伸びるコードに手を掛けて引きぬいた。
「ちょっ、やめてよ。」
 そう言いながらも、抵抗せずにニコニコと歩き続け、「聴いてみる?」なんて言った。
その言葉に甘えて、手に取ったイヤホンをそのまま自分の耳へと着ける。
 当然ながら演奏途中、少し古そうなロックのようだった。普段音楽なんて聴かない俺にも爽やかに、心地よく感じるようナメロディーの曲。ロックも悪くないんだなと思いながら、少し興味が湧いたのでバンド名を聞いた。
「……って云うバンドだよ。少し前までは結構人気だったらしいけど、解散しちゃったらしいよ。」
「そっか、ありがとな。ほらよ。」
 ちょうど曲が終わった所で、イヤホンを返した。無意識だったのか、早川は再び耳につけようとしたイヤホンを丸めてポケットに収めた。
 その後適当に雑談も適当に切り上げて帰路をたどり、丁字路で早川と別れた。「普段と違う道じゃない?」と不思議がられたが、スーパーで晩を買いに行くんだと告げると納得して歩いていった。
 下校時刻、ちょうど安売りで有名なこのスーパーマーケットには、今から帰宅するであろう旦那様の夕飯材料を買う為に、たくさんのばーさんの大群が押し寄せている。
そんな状況に憂鬱方になりながら、人のバリケードをするすると抜け、生鮮食品コーナーへと向かった。
 すると、ばーさん共の間に意外な人物が立っているのを見つけたので、少し早足で近づいてその人物に声をかけた。
「よー、遠井。」
 ぼーっと立っていたそいつに声をかけると、一瞬わたわたとたじろいでこちらをむいた。そして俺を見るなり、表情を明るくして寄ってきた。一歩近づくたびに髪がふわふわと浮いていたのが、懐かしさ混じりに可愛らしかった。
「ネコ先輩、お久しぶりです!」
 この人だかりの中、大きな声と共にぴこぴこと手を振って駆け寄ってきた。そんな事しなくてももう気付いてるからな……、と思いながらも、今のコイツの発言で周囲の視線を一杯に浴びながら俺も挨拶を返した。
 ちなみに今のへんてこな渾名がついたのは、二ヶ月前にあった或る事件のせいだ。決して悪い理由ではないのだが、今説明することではないだろう。そんなこんなで、初対面のこの女子とお知り合いとなったのだ。
「本当久しぶりだな、調子どうだ?」
「本当って、二ヶ月ぶりですけどね。ふふっ。」
 いきなり吐かれた悪態に口を噤むが、遠井は構わず話し続ける。
「今日の晩は何ですか?」
「親子丼。」
「まぁた親子丼ですか?」
 前に何度かこのスーパーで遭遇したとき同じ質問に同じ返答をしたかまでは記憶にないが、多分俺はそう答えたんだろう。実際買い溜めている米を消費しつつ好物の鶏肉を入れられるから、親子丼率は自然と高くなっている。……のと、一番の理由は普通に親子丼が好きなだけなんだけどな。一人暮らしでよく言うカップラーメンは実際のところ栄養価はスナック菓子扱いと何処かで聞いた気がするから自然と避けている。どうでもいいよな。
言っておくが、飯をメニューを自分で決めて、材料まで階に来ているのは別に俺が甲斐甲斐しく家事の手伝いをする親孝行な高校生だからではない。そもそも狭いワンルームの簡素なアパートに帰ったって、両親はすでにこの世に居ないからな。一軒家で静かに暮らしていた俺を含まない家族二人は、まだ中学生だった俺の目の前で二人とも殺された。こう、思い出すたび、脳内には顔の見えない殺人鬼に喉元をナイフで切り裂かれ、血しぶきを上げながら倒れてゆく母と父の最期が脳内にハッキリと浮かぶ。そう言えば、遠井もなぜか叔父夫婦が面倒見てくれてるんだっけ。
「せーんーぱーいっ!」
 その思考を、遠井の少し高い声が遮った。
「あ、ああ、すまん。考え事を。」
「じゃなくて、また親子丼なんですかって、聞いたんですよっ。」
 口を尖らせてぷりっぷり怒っている。いつも通り元気な姿に、俺まで元気が戻ってきてしまい、更には遠井のこの動作が妙にかわいいと思ってしまった自分をどうしてやろうか。
「そうだ。お前んとこはどうだ?」
 すると今度は尖らせていた口をアヒルのように横に広げて「気になります?気になるんですか?」と挑発混じりに言う。
 ああ、気になるからさっさと言え。
「うちはみんな大好きチキンカレー、ですよ。作るのは叔母さんですけど。」
 なぜか遠井はふふんと鼻を鳴らす。
「そうだ、カレー結構時間掛かりますし、私が先輩の親子丼作りましょうか?」
そう言って、首を斜めに傾けた。
 何を言ってるんだお前は。
「何って、今から一人暮らしの先輩の家で私の特製親子丼を振舞おうって話です!」
 と、ニコっと笑う。
「……自分で作れるんだけど。」
「後輩の手作り!価値はダイヤモンドなんぞ比べ物になりません!」
 なぜそこまで自分の料理に自信が生まれるんだ?
「練習したんですよ、親子丼。」
「おぉ……。」
 つい、その熱意に負けて感嘆してしまった。本当は少し食べてみたいが一人暮らしの高校生に年下の中学生を連れ込むことなんぞマナー違反だ、断る。
「酷いですよ、けなげな後輩をそんな風に~。」
「駄々をこねるな、ほら叔母さんが心配するから早く買い物を終わらせるぞ。」

 物分りが悪いわけではないが往生際の悪かった遠井を宥めながら買い物を終わらせ、何とか帰宅した。もちろん一人で。
「ふぅ……。」
 一息つくとすぐに制服を脱ぎ、部屋着ではないパーカーとズボンを履いた。
そしてキッチンへと立ち、親子丼を作ってその場でさっさと食べる。
「ごちそうさま。」
 どんぶりと箸はそのままに、今度はスクールバッグのジッパーを横に滑らせ『あの』ハードカバーを取り出し、開いた。
 その本の表紙をめくると、本来あるべきページたちは無く、外側だけ残して中央は刳り貫かれていた。
「なるほどな、今回はナイフか。」
¦¦¦そこには、ナイフとメモが入っていた。
 誰宛か知らん解説をつけると、これは人殺しの指令書。そして、俺は殺し屋なんだ。
 学生が殺し屋なんて、普通じゃない。そんなことは分かってる。でも、そう思うから目をつけたんだ、誰かさんがな。
 雇い主は誰かなんて、全く分からない。ただ仕事は小宮が仲介し俺へと運んでくる。俺はその対象を殺せばいい。それだけだ。
 黒く鈍く光るナイフを本から取り出す。ハンドルには四つ溝があり、ブレードは折りたたみ式だった。
「なかなか握りやすいな、さすがウージー。」
作品名:殺し屋少年の弔い 作家名:Hiro@文芸部