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君のいる場所~第一章~【エピローグ】

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【エピローグ】



隣国である『シガン王国』へ向かう馬車内。
窓はあるのにカーテンは閉められていて外の様子が伺えない。
カナデはつまらなさそうな顔をしながらカーテンをただ見つめていた。

「カナデ、外が見たいのか?」

正面にいたダージスがカナデにそう言う。
カナデはその言葉にぴくりと反応したが、静かに首を振った。

「いい。後で外を歩けるんだ。これぐらい我慢する」

ダージスに微笑むと、また外の見えない窓に視線を戻す。
今どんなところを通っているのかは全く検討がつかない。
だが、外の世界を想像するだけで胸が躍る。
外に出られるのなら、おやつでも我慢出来るし、いい子にもだってなれる。
それくらい、カナデは外の世界に執着していた。
一体何がカナデをこんなにも夢中にさせるのかは分からない。
もしかしたら、何かに引き寄せられているのかもしれない。
それはまだ誰にも分からないこと。
カナデの何かを変えるものが外の世界の何処かで働いている。
そんな気がしてやまない。
そんな恐怖を、アリサは覚えているのだ。
いつかカナデが、自分の前からいなくなってしまうのだろうか。
何も言わず、一人で…。

「ルイお兄様」

馬車の横を歩く一頭の馬に、ルイとアリサが乗っている。

「どうしました?」

ルイの優しい声がアリサの頭上から聞こえてきた。

「カナデ様はいつか、私の前からいなくなってしまうのでしょうか」

アリサは少し俯きながらそう呟く。

「…どうして、そんなことを?」

数秒の沈黙の後、ルイが重い口調でそう言った。

「そんな気がしてやまないんです。いつかカナデ様が私の前から、何も言わずに消えてしまうのではないかと。外の世界に、引き込まれてしまうのではないかと…」

アリサの言葉に、ルイは何となくそうなるのではないかと思った。
何の根拠もない。
だがアリサの言葉は、ルイに恐怖をうえつける。
ルイはその恐怖を誤魔化すためにアリサの頭を優しく撫でた。

「大丈夫です。何があっても、貴女はカナデ様をお守りしなくてはなりません。だからこれからも、ずっと一緒です」

その言葉に、アリサが安堵の息をもらす。

「そう、ですよね」

アリサが安心したように呟く。

「見えてきましたよ、『シガン王国』が」

ルイの言葉に、アリサが顔を上げる。
正面に広い外壁があり、中心に大きな城が見えた。
城の大きさは『ジル王国』と同等と言えるだろう。
そんな隣国で、事件が起こった。


【第一章END】