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おねえちゃんの彼氏

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 そう思うとわたしたちは全然似てない。似てないって思うのに、こっちの学校にきた時みんながわたしたちのこと、双子だと思ったって、顔だって全然違うのにね。たしかに姉妹だからすこしは似てるんだろうけど、同じ人に髪切ってもらってるからかな。おねえちゃんはあんまり気にしてなかったけど、わたしはちょっとやだったな、そんなこと初めて言われたし。

 それからすぐにクラスメートだったコースケと親しくなった。クラスに日本人はあまりいなかったし、わたしたちの他は中国とか韓国の人ばっかりだった。いつからおねえちゃんと付き合いだしたのかはわからない、いつの間にかそうなってた。わたしそういうこと、いつも気づくの遅いから。それにおねえちゃん、いつも気づくと彼氏が変わってるし、重なってる時期もあるんじゃないかな。そんなところ、わたしと全然ちがう。わたしは全然早くないもん、今の彼氏とだって結構時間かかったし。それが普通だと思うけど、だからって別におねえちゃんが軽いなんて思わない。ひとそれぞれだし、おねえちゃんは単純にそういうことが好きなんだと思う。
おねえちゃんと比べると、わたしはいい子、まじめだって、みんなの目にはそう映ってる。見た目は双子みたいなのにねって。

 おねえちゃんがいなかったら、わたしがコースケとそういう風になってたかもしれない、なんてね、わたしみたいなの、コースケはタイプじゃないかな、つまんないって思うかな。
わたしになんか興味ないのかな。

 コースケみたいな人、いままでわたしの周りにはいなかった。
いつも明るいし、一緒にいると安心する。授業の時とか、コースケがいるだけでクラスの雰囲気が変わるんだもん。いままでのおねえちゃんの彼氏とは全然違う。遊んでると思うのに、そんな感じがしない、ちょっと清潔感があるんだよね。バカみたいなこと言っても、やな感じがしないから、素直に笑っちゃう。いつも一緒にいたいと思う。
わたしたち姉妹は二人ともちっちゃいから、コースケとつり合わない。特にわたしなんか、となりにいると妹みたいに思われちゃうんじゃないかな。
あんなお兄ちゃんだったら楽しいのにな、背も高いし、かっこいいし。それにお兄ちゃんだったら、おねえちゃんとみたいに比べられることもないし。

 もうすぐ寝なくちゃいけない時間だ。明日は学校みたいには早くないけど、わたしたちの家はロンドンまで列車で行かなくちゃいけないから早く出なきゃいけないんだよね。まだ眠くないのに、今ベットに入っても絶対すぐに寝れないのに。
こんな時にはなんとなく、タバコを吸いたくなる。わたしがタバコ吸ってるなんてまだ誰も知らないよね、部屋の窓開けてこっそり吸ってるし、それにたまにだしね、まったく、これってコースケの影響だよ。

 クラスが始まって間もないころに、みんなでクラブにいったんだけど、わたし最初に誘われた時、断ろうと思ったんだ、だって一緒に行くのがコースケの他はおねえちゃんと、あとそんなに仲良くない韓国人の女の子だったからめんどくさそうでさ、でもなんか断るタイミングはずしちゃって、それに実はわたし日本でもクラブなんて行ったことなかったから、ロンドンのクラブなんて、ってちょっと不安だったんだよね。でも、みんなそんなの全然平気で、なんか馴れてる感じだったからわたしも内心びびりながらもみんなみたいに、わたしだって馴れてますよって感じよそおってた。
そのクラブはすごい広くて、何フロアーにもなってて、それなのに暗くてすごい混んでて、わたしみんなについて行くのに必死だったんだよ。途中でおねえちゃんとその韓国人の子はイギリス人の男の人に声かけられてどっかいっちゃうし、わたし、はぐれたらどうしようって、そのことで頭いっぱいになっちゃって途中から、クラブの中をぐんぐん移動するコースケの服のすそ、ずっとにぎってた。そしたらコースケ、わたしがおどおどしてるのわかったみたいで、ちょっと休もうかって、音楽がうるさくても聞こえるように、耳もとでどなってくれたの。
あの時、ソファーに並んで座って、そこでわたし、はじめてコースケからタバコを貰って吸ってみたんだ。コースケがタバコ吸うの見てたらすごくおいしそうで、わたしもって言ってみた。それまではわたし、あの匂いが苦手だったのに、あの時はやっと落ち着いたのと、コースケがそばにいるって安心感もあったのかな、すごくおいしいって思った。

 そういえばこの前、コースケの寮のシャワーが壊れて何日も身体洗ってないっていってた日、となりにいるだけでコースケの匂いがすごいわかって、わたしこっそり嗅いでたんだ。彼氏があんまり匂いがない人だし、友達の男の子の匂いなんて普段気にしたことないから、コースケの知らない部分を知っちゃったみたいで、ちょっとドキドキした。
この前ひさしぶりに嗅いだ彼氏のとか、思い出しちゃったよ。
おねえちゃんはいつもコースケの隣りでこの匂いを嗅いでるんだよね。
付き合ってるんだから当たり前なんだけどさ、
あの後から、二人を見る目が変わってきちゃった。

 あの時のコースケの匂い、あれからわたしたまに思い出すの。ひとりのとき、部屋にいるとき、ベットの上で、眠る前に、頭の中で、思いえがく。布団を頭からかぶると、ピローケースに染み付いているわたしの匂い、それを感じながらコースケの匂いを思い出したら、ふたりの匂いが重なって、まるでふたりで布団にもぐってるみたい。わたしの匂い、コースケ知ってるかな。さっき使ったボディーソープがうっすらと匂う、リンスの匂いも、それに熱くて湿っぽいわたしの吐く息が、布団の中で充満する。おねえちゃんはコースケと、どんな風にしてるの、彼氏とのことなんて、今、思い出さしたくない、もしこのわたしのベットに、もし、コースケが、なんて、思い描く、そうすると、たまらなく恥ずかしくて、コースケの顔、見れない、もし、こんな近くで、見つめ合ったら、なんにも言えなくなる、バカみたいだよう、おねえちゃんの彼氏、なのに、コースケ、日本に彼女がいるのに、こんなこと想像してるなんて、いけないことだって、そんなこと、わかってるけど、どうしようもないの。もし、コースケとわたし、ベットの中で、鼻と鼻がつきそうなほどくっついたら、コースケの固い腕で、身体が折れそうなくらい抱きしめて、わたしも、あの大きい背中に両手をまわして、ねえ、わたしだって彼氏、いるんだよ、それなのに、こんなことして、いいよね、秘密だよ、ね、秘密ならいいよね、わたしたち、だけの中で、誰にも言わないで、今、わたしが泣いてることも、わがままいってることも、こんなせつない気持ち、はじめてだってことも。
そう、もっとぎゅってして、おねえちゃんにしたよりつよく。
わすれないように、わたしをわすれないように。

 コースケは帰ってしまう。わたしたちと明日過ごして、あさっての飛行機で大阪に帰って、大学にいったり、就活はじめたりして、もとの生活に、いままでのコースケの毎日に戻っていくんだ。
わたしたちもあと少ししたら帰る。あの東京の家に帰って、大学に復帰して、バイトしたり、友達や彼氏と会ったりしてるうちに、こっちでのことなんて、すぐに昔のことみたいになっちゃうんだと思う。
作品名:おねえちゃんの彼氏 作家名:MF