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第4章 道中にて



なんか、頭もクラクラしてる気がするなと思いながらも病院目指して歩いてみた。診断書さえ貰えれば急ぐ必要もない。

しばらく歩いていると、正面から見たことのある人が歩いてくる。

「しげさんっ!!!」

お、和弥じゃないか!久し振りだなぁ~!何してるんだ?

***

しげさんは、中学一年生の時にお世話になった担任で国語の先生。一重(かずしげ)と言う名前だった為に、生徒からはしげさんと呼ばれていた。先生は温厚で生徒思い。だけど情熱的で熱い先生だった。生徒のケンカの仲裁に入った際、体罰だと生徒に因縁を付けられ、それからは担任を持てなくなった。実際、俺も体罰じゃないと思ったが、その時のPTAの圧力でそんな結果になってしまった。ケンカの一部始終を見ていた俺は校長にも説明したが校長はPTAの言いなりで話など聞いてくれなかった。そんな俺に対してしげさんは「担任は持てなくなったけど、いつまでもお前は俺の生徒だから気にするな!」と慰めてくれた。慰めたかったのは俺の方なのに。

***

「先生、久しぶりです!今、病院…あ、学校に行く途中なんですよ!先生はどうしたんですか?」

俺、この近くの学校に赴任になって。通学の安全巡回してたんだよ。片倉先生も一緒だったんだけど、会わなかったか?

「片倉先生もですか?会わなかったですね…」

***
片倉先生とは、中学一年生の時の副担任で若い女の先生。英語が苦手だった俺に自由勉強ノートってのを作ってくれて、単語練習でもアルファベットでもいいから毎日何か勉強して私に見せてほしい。そしたらきっと英語が好きになるから!と言ってくれた。今は感謝の気持ちでいっぱいだ。英語が好きになれたことで、洋画わ吹替えで見ずに済むのだから。あ、意味が分かるわけじゃない。英語を読むと眠くなるって人が多い中で俺は眠くならずに楽しんで観ることができるって事。ペラペラ分かれば最高なのにそこまでのレベルではない…(汗)

***

俺、学校行くんで失礼しますね…

先生、今度コーヒーでも飲みましょう。先生の学校と俺の学校近いみたいだし。また会いましょう。

「……和弥!!!お前は中学の頃、大工になるって言ってたよな?その夢は今も変わらないか?」

俺、大工って言ってたっけ?(笑)


先生、今の俺の夢は『教師』です。先生みたいに生徒を思いやれる教師になりたい。だから、応援しててください。いつか、教壇に立つ姿を見てください。

「和弥、その夢が確かならお前はこの道を行ってはだめだ。」

先生、俺の学校そっちなんです。この道行かないと。

「先生の言うこと聞けないのか?」

反抗してるつもりはないよ。ただ、ちょっと急いでるんで(右手がどんどん痛くなってきた)真っ直ぐ行かせてください。

「この先な、お前に試練を与える者達がいると思う。だけどな、惑わされるなよ。」

急に先生、何言ってるんですか?また、何か、あったんですか?何があっても俺は先生の生徒だよ。俺も相談あったら会いに行くから男同士の話し合いしようね!
んじゃ先生、また今度!

俺は先生を横切って、真っ直ぐ病院に向かう。
気のせいだろうか先生の顔は寂しそうに見えた。

あ、先生に来年は教育実習だって言い忘れた!

ふと、後ろを振り返った時には先生の姿は無かった。

頭も痛い。右手も痛い。こんなになるんだったらタクシーでも捕まえればよかったなと今更思った…。

俺はさっきよりも少し急いで、歩いた。