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アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【012】

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  【012】



 そして、『元気ハツラツ少女! アイリちゃん』の大立ち回りが終わった。

 何か、アニメのタイトルみたいだな。

 何か、前にも、こんな冒頭スタートがあったな。


 まあ、そんなことは、どうでもいいのである。


 さて、アイリちゃんの大立ち回り後……『ろくでなし連中』の四人は、プスプスと『黒炭まみれ』になった状態でロープに縛られ転がっていた。

 まあ、見事にこんがりと焼けたもんだ。

 一応、四人とも息はあるようだったので少し安心した。


「いやー終わった、終わった。ごめんねー旅の人たち……ちょっと待たせちゃったね?」


 そう笑顔で言い、舌をペロッと出しながら、アイリは俺とシーナのほうに近づいてきた。

「あ、いえ、そんな……」
「はい、だ、大丈夫です、そんな待ってませんから」
「そう? ありがと。あ、ところでさ~、さっきこの辺で『大きな火柱』っぽいの見なかった?」
「「……えっ?」」

 俺とシーナが、同時に反応する。

「いや、さっきあの四人組と戦っているときなんだけど、ちょうど二人がいた方角から『赤い光』が見えたんだー」
「「そ、そう……?」」

 俺とシーナは知らないフリをした。

「うん、確かに見えた。わたしね、『火の魔法』を使うからよくわかるんだけど、あの『赤い光』は、おそらく『火柱』みたいなものが原因だと思うの」
「「ひ、火柱……?」」


((こ、この子…………するどいっ!))


「しかもね、もし『火柱』が原因なら、あれくらいの明るさだと、たぶん…………『10メートル級の火柱』だったんじゃないかなー?」
「「へ、へー……そうなんですかー」」


 冷や汗、全開!


「そうかぁー、二人とも見なかったか~……けっこう広範囲で見れたと思ったんだけどな~」

 と、アイリのその言い方は、何か……『探り』を入れてるような言い方にみえた。


((さ、さすが、カールトン神父の娘。似たもの親子……!))


「んー……ま、いいか。もう遅いし、帰ろっか?」
「「そ、そうだね、帰ろ、帰ろ……」」

 俺とシーナとアイリの三人は、教会へ戻るため、森の入口へと向かった。



 森の入口まで来ると何人かの人影が見えた。

「だ、誰か……いる」

 と、シーナ。

「……そう?」

 と、俺。

「……パパッ!」


「「えっ? パパ? てことは……神父さん?」」


 そう言うと、アイリは飛び出してカールトン神父のところへ全速力で向かっていった。

「ア、アイリーーーッ!」

 すると、向こうからカールトン神父も駆け出して、アイリのところへ向かっていった。

 そうして、駆け出した二人は、真ん中で強く抱き締め再会を喜んだ………………ということはなかった。


「「はぁぁぁあああーーーっ!」」

 ガキィィィーーーーッ!


 そのかわりに、格闘選手よろしく、二人は、真ん中で『組み手』で会話を始めた。


 ガッガッガッガ……!

「どう、だった、アイリ? 四人、組は? さすがに、大人四人だから、パパ、ちょっと心配だった、んだぞっ!」

 ガッガッガッガ……!

「もう、パパったら、過保護過ぎっ!、あれくらい、何でも、ないわよっ!」

 ガッガッガッガ……!


 この親にしてこの子あり……そんな言葉の似合う親子だった。

 隼人とシーナは、そんな二人を呆れ顔で見ていた……すると、


「あなたたちは誰ですか?」


 と、後ろからガタイの良い身体に赤色の鎧を纏った兵士に声をかけられた。

 すると、神父とアイリが俺たちのところへ来て、

「王立軍の皆さん、この二人は旅の者で、さきほど教会でお休みになっていたところを、アイリを助けるためにと協力してくれた人たちです。なので、決して怪しい者ではございません」

 と、兵士にていねいに説明をしてくれた。だが……、

「そ、そうは言ってもですね、神父……身元確認は一応しないといけない義務ですので。まあ、ここは、とりあえず二人の身元がわかるまでは、軍支局で保護させていただきます」
「ええ……そ、そんな、兵士さん」


 ぐ、軍支局で保護……?

 そ、それって、つまり、『捕まる』ってこと?

 し、しかも、『身元確認』て……俺たちは今日初めて、ここ(アナザーワールド)に転生してきた人間だぞ。

 身元なんてあるわけないじゃないか。

 ど、どうしよう、どうすれば……。


 すると、横にいたシーナがその兵士に向かっていき『紙のようなもの』を差し出した。

「兵士さん、失礼しました。これがわたしたちの『身元』ですので、どうかご確認ください」

 兵士がシーナから、その『紙のようなもの』を受け取り、見るやいなや、顔を青ざめ、態度が「ゴロッ」と「劇的」に変わった。


「し、失礼しましたー! あ、あなた方は、あの……『セントリア王国王立中央魔法アカデミーの特別招待生』だったんですね。と、とんだご無礼をっ!」


 そう言うと、その兵士は俺とシーナに向かってきれいな『敬礼』をした。

 また、その兵士だけじゃなく、後ろにいた他の兵士たちも皆、俺たちに『敬礼』をした。

 あと、その『セントリア王国王立中央魔法アカデミーの特別招待生』という言葉を聞いたアイリと神父も反応し、組み手がピタッと止まった。


「あ、そ、そんな、やめてください、敬礼だなんて。わたしたちが名乗るのが遅れただけなのに……すみませんでした」

 と、シーナも兵士の態度には驚いているようで、とりあえず謙虚に兵士へ深々と頭を下げた。

「そ、そんな、やめてくださいっ!『特別招待生』のシーナ様が私ごとき『一兵士』に謝るだなんて……そんな、もったいない」

 と、兵士はシーナよりもさらに頭を下げて誠意を見せた。そして……、


「神父様ー! このお二人の身元は分かりましたので私はこれにて支局へ戻ります。あと、二人とも『セントリア王国王立中央魔法アカデミーの特別招待生』なので、丁重にもてなすようお願いします! では、失礼するっ!」


 そう言うと、兵士たちは支局へ馬を走らせ帰っていった。

 すると、シーナが俺に一言……、


「と、『特別招待生』って…………何?」


 そりゃ、こっちのセリフです、シーナ様。