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アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【009】

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  【009】



 ショック!

 すごいショック!

 そして、恥ずかしいッ!

 さっきまでの『テンションアゲアゲの俺』。


「お前が最後まで話を聞かずに『妄想暴走』して勝手に恥部を曝け(さらけ)出しただけだろうが……」
「ぐ、ぐぬぬ……ぐぬぬぬぬ……」

 はい、ぐう正。

「いいか? よく聞け? わたしが言ったのは『いまのお前では使えない』ということだ」
「もういい……もういいんです、シーナさん。あまり期待させて、ボクを困らせないで…………お願い」
「はぁ~、今、言ったばかりだろう…………がっ!」


 ぎゅうううううーーーー。


「頬つね」発動。

「い、痛ててててて……っ!」
「は・な・し・を・さ・い・ご・ま・で・き・けっ!」
「わ、わかっひゃっ! わかりまひたっ! ひゃ、ひゃいごまで、話、き、聞きまひゅ、聞きまひゅぅーーっ!」
「……まったくっ!」


「頬つね」停止。


 俺が頬をスリスリしている横で、シーナが話を続ける。

「『いまのお前』が『神の力を具現化できない理由』……それは、『媒介役(メディエーター)』としては、あまりにも『汚れ過ぎているから』だ」

――どうして、こんな酷いことをこの人はサラッと言えるんだろう。

「シーナ……それは、かなり傷ついたぞ。俺のハートはもうボロボロだよ? 何? その『汚れ過ぎているから』って……よく、そんな酷いことをサラッと言え………………ううっ」


 もう、泣き言しか言えないです。

 もうシーナには抵抗できない俺がそこにいます。

 あ、涙まで出てきました。

 涙……? これが涙? 泣いてるのは……わたし?

 どっかで聞いたことのある『綾波なセリフ』まで出てくる始末。


「バ、バカッ! 違う、違うっ! そうじゃないっ! それは『しょうがないこと』なんだ! だ、だからだから、そんな……な、泣くことないだろっ!」
「ぐす……ぐす…………えっ?……しょうがない……こと?」

 俺が泣いて落ち込んでいる姿を見たシーナがあわてて説明した。

「そ、そうだっ! いいか、お前の『前世』は『地球の人間』だろう? だから、それは『しょうがないこと』なんだよ」
「……ど、どういうこと?」
「元々地球で『人間』として生活していた魂は『利己的欲求(エゴ)』をかなり持っていて、それは、他の異世界の中でも『類を見ない』ほどなんだ。そして、それが『神とこの世界(アナザーワールド)との媒介』に際して、『大きな弊害』となる」
「……大きな弊害?」
「ああ、そうだ。そして、その『利己的欲求(エゴ)』は、『前世』ですべて『解消』されてなければ『次の転生先』にも引き継がれる。そして、それは、お前もまた然り……だからだから、『『いまのお前』では『神の力』は媒介できない』ということになる」

 俺は、一通り、泣き止み、改めて冷静に話を聞いた。

「さっき、わたしが『食事をするのは初めて』と言ったが、その『食事をする』という行為の動機である『食欲』は、人間の持つ『利己的欲求(エゴ)のひとつ』だ。本来、わたしは『食事など摂る必要のない世界』の住人だ。それに、わたしのいた世界では『利己的欲求(エゴ)』はほとんど存在しない。だから、それだけを見ても、お前とわたしとの『媒介役(メディエーター)としての差』が出るのはしょうがないことなんだ」
「つ、つまり、それって、俺が『前世が地球の人間』である以上……そして、『利己的欲求(エゴ)』が強い以上……『媒介役(メディエーター)』にはなれない、てこと?」
「そうだ。しかも、『地球に転生した魂』である『人間』は、さっきも言ったが『この次元の他の異世界』の中でも特に『利己的欲求(エゴ)を抱える存在』だ。だから、『前世が地球の人間』で『媒介役(メディエーター)』なんてほとんど無理な話だし、そもそも『前例』がない」

「じゃ、じゃあ、やっぱり……っ!」

 俺は、「やっぱり無理じゃん」という思いで、またブルーになった。

 しかし……、

「まあ聞け。だが、しかし、今回の隼人、お前の件だけは…………『例外中の例外』にあたる」

「れ、例外中の……例外?」

「うむ。本来、この『アナザーワールド』に『前世が地球の人間だった魂』が転生したことは、今まで……一度たりとも……無い」
「そ、そうなんだ……」
「うむ。だから、別にお前に才能が無いとかそういうことではないんだ。だ、だから……」
「……?」


「だ、だから……そんな落ち込んだ顔などするなーーーってこと!」


「…………えっ?」
「……えっ? あ、あわわわわわ…………だ、だからだから、そ、その……そんな『辛気臭い顔』なんかすんなっ! そ、そんな顔されたら、こっちだって嫌なんだよっ!……だ、だから、その、そ、それだけだ!………………ふんっ!」

 な、なんだ? シーナの奴……?

 あっ!

 も、もしかして、こいつ今……、


 俺を励ましてくれてたのか?


……俺は、そんなシーナに、

「す、すまん……」

 と、心から素直に謝った。

「も、もういい! い、今のは気にするな…………そ、それよりも、話を……続けるぞ」

 と、顔が赤く蒸気したシーナは、自分の顔を見られないように隼人から顔を背けて話を続けた。

「コ、コホンッ! そ、そんな『例外中の例外』である隼人、お前に対して『神』は、『この世界で『媒介役(メディエーター)』になれる方法』を用意した」
「おおっ! マ、マジで?」
「うむ、マジで。そして、その方法とは……」
「きたきたきたーー!」


「お前の『利己的欲求(エゴ)を一つ封印すること』だぁーーーっ! 元気ですかーーーっ!」


「……」

――シーン。

「あ……あれ? 隼人くん? どうしたの? こ、これって、けっこうすごいことなんだよ?」
「い、いやいやいやいや、そんなこと言われても俺にはわからないし、それに、なぜ……イノキ?」
「何? 隼人? お前『イノキ』も知らんのか?……まったく、相変わらず『残念な奴』だなあ、隼人は」


 シーナさん、もう、そういうのはいいです。