二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

りんはるちゃんと真江で、あけおめ小ネタ

INDEX|6ページ/6ページ|

前のページ
 

願い事(りんはるちゃんの場合)



神社から出て解散となり、凛は遙とふたりで歩いていた。
特に目的もなく進み、海沿いの道に出た。
元日であるせいか、初詣客でにぎわう神社仏閣とその周辺はともかくとして、道にはほとんどひとがいない。
「凛、おまえ、参拝したとき、なにを祈った?」
ふと、遙がたずねてきた。
いつもの無表情、感情のこもらない声だ。
なにを祈ったか。
特に隠すことでもないので、凛は正直に答える。
「水泳で良い成績を出せますように、だ」
「……」
遙はすっと眼をそらした。
無表情のままだ。けれども、その顔に少し陰があるように見える。
「……おまえは水泳ばっかりだ」
少しして、遙はぽつりとひとりごとのように言った。
凛は戸惑う。
「じゃあ、おまえはなにを祈ったんだ?」
「……」
遙は答えず、視線をそらしたままでいる。
答えたくないようだ。
凛は遙が祈ったことを考える。
遙の願うこと。
そして、凛は遙に問いかける。
「毎日サバが食べられますように、か?」
「今、真剣におまえを殴ろうかと検討しているところだ」
遙は凛のほうを見て言った。
凛に向ける眼差しは強い。
それを眼で受け止めて、凛は言う。
「冗談だ」
軽く笑ってから、続ける。
「今年も俺と一緒に泳げますように、だろ?」
遙は眼を見張った。
それから、口をへの字に曲げ、また眼をそらした。
図星だったらしい。けれども、それを認めたくないようだ。
凛の関心が水泳のみに向けられているのに対し、遙は凛と一緒にいることを願っている。その差が、イヤなのだろう。
でもなぁ、と凛は思う。
遙は神頼みしなくても、綺麗に、早く泳げるのだ。
凛がどれだけ望んでも得られない天賦の才を持っている。
正直、うらやましい。
そのくせ、遙は競泳で勝つことにこだわっていない。世界を目指そうという気はまったくない。
ただ、凛と一緒に泳げればいいのだ。
皮肉な話だと思う。
望んでいるのに持っていない者と、望んでいないのに持っている者。
しかし、そんな話をするつもりはない。
もう、切り離して考えることにしている。
切り離して、今、自分の中にある感情を素直に口に出す。
「俺はおまえが好きだ」
きっぱりと告げた。
自分は水泳中心に生きていて、遙に対して強いコンプレックスを抱いていた時期があるのは事実だが、それとは別に、純粋に遙のことが好きだという気持ちがたしかにある。
「これで満足か?」
遙は黙っている。
だが、少しして、凛は自分の手に遙の手が触れたのを感じた。
遙は眼をそらしたままでいる。
けれども、凛の手を握ってくる。
そして。
「……満足だ」
そう遙は言った。
本人はいつものように無表情でいるつもりかもしれない。
しかし、その口元がわずかにほころんでいる。
幸せそうに見える。
彼氏として彼女が幸せなのは良いことである。
でも。
そういえば。
「好きって言ったの、俺は何回目かだが、おまえ、一回も言ってくれたことなかったよな」
つないでいる遙の手が硬くなったように感じた。
擬音で表現すると、ギクッ、だ。
「いいかげん、言えよ」
「……そんなこと軽々しく言えるか。態度でわかるだろう」
「おまえは一昔前の日本男児か」
そう凛はツッコミを入れ、さらに言う。
「じゃあ、俺も言わねぇからな」
少し厳しめに告げた。
すると、遙は足を止め、凛のほうを向いた。
凛もつられて立ち止まる。
遙はじっと凛を見ている。
その眼が、それはイヤだ、と訴えている。
好きだと言ってほしいらしい。
「だったら、おまえも言え」
遙の視線による要求をはねのけて、凛は厳しく言った。
遙は困っているような表情になった。
そして、さらに、葛藤しているらしい表情になった。
時間が過ぎていく。
やがて、ようやく、遙が口を開いた。
その口から出た言葉は。
「無理だ」
だった。
凛の肩の力が抜けた。
なぜそんなに抵抗があるのだろうか。
いや、自分だって抵抗があるのだが、それを乗り越えて言っているのだが。
だが、まあ。
「努力は認めてやる」
そう凛が言うと、遙はほっとした顔になる。
凛は眼を細めた。
「だが、いつか言えよ。ってか、言わせてやるからな」
遙はなにも言わずに眼をそらした。
それから、どちらからともなく、また、歩きだす。
ふと。
「おまえがさっき言ったこと、少しだけ間違ってる」
遙が凛のほうを見ないまま言った。
凛は眉根を寄せる。
「なんだ?」
「今年も、じゃない、ずっと、だ」
直後は、遙が言ったことがよくわからなかった。
けれども、凛はしばらく考えて思いあたる。
遙が祈ったこと。
今年も、じゃなくて、ずっと凛と一緒に泳げますように。
その遙の願いを感じて、凛は笑った。