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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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衝突


『北朝鮮・発射台』 クリスマス 正午 


 東海(トンヘ)衛星発射場には4基のムスダン?ミサイルが発射を待っていた
 ムスダン?は全長約十三メートル、重量は十三トン、射程距離は3000?〜4000?である。このミサイルには“搭載不可能だと思われていた”MIRVを世界の予想を裏切って搭載していた。
 MIRV多弾頭独立目標再突入ミサイルは、ひとつの弾道ミサイルに複数の弾頭を装備し、それぞれを決められた目標に向かって攻撃させることができる。目標上空で分裂するため、全部を打ち落とすことは非常に難しいとされている。
 初弾は韓国へ。そして……あと三基は日本に向けられていた。つまり弾頭が目標上空で三つに分裂するとして、韓国に三発、日本に計九発の小型弾頭が落ちることになるのだ。
 金政恩主席の手が最終発射レバーにかかり、静かにカウントダウンを待っている。後ろには軍部の将校たちが、緊張した面持ちで直立不動のまま見守っていた。
 部屋の中は耳鳴りがするほどの静寂に包まれ、全員が歴史的な瞬間を固唾を呑んで待っている。
 そして、ついにカウントダウンが始まった。
「5、4、3、2、1、ゼロ! 全ミサイル発射!」
 白い手袋を嵌めた主席の手が、赤いレバーを順番に四つ上げていく。部屋の中の者はその手元から目を離さない。そして全てのレバーを上げ終わった瞬間、全員が敬礼をする。
 指令室のモニターにミサイル発射の様子が映し出されている。将校たちはまだ敬礼の姿勢を寸分も崩さない。彼らの顔には歓喜の表情が浮かび、中には感極まって涙を流している者もいた。
 モニターの中の十二輪の自走式発射機四台は、瞬く間に発射の煙に包まれ姿を隠した。
 ミサイルは発射後、第一・二・三段を燃焼終了後に切り離し、弾頭部分を分離する。弾頭は大気圏を突破し、与えられた運動エネルギーにより弾道飛行して目標に向かう。
 最高の高度は500kmを超え、音速の十数倍以上の速度で大気圏に再突入する。ちなみにスペースシャトルの周回軌道は高度300-400km程度だ。
 発射は大成功したと現地から報告があった。それを待っていたかのように中央朝鮮テレビでは発射成功のニュースが流れ、放送を見た国民は実質的『宣戦布告』に歓喜した。
 だが、日本海にはイージス艦三隻と本土にはPAC‐3が待ち構えている。まずは韓国の鳥山空軍基地へ向かったミサイルだが、重武装イージス艦『世宗大王級駆逐艦』の迎撃を躱さなければならない。これは約三分後にせまっている。
 そして日本各地への着弾予想時間は約八分後だ。今まさに歴史的な悲劇が幕を開けようとしていた。