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かざぐるま
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novelistID. 45528
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『統括本部室』 十二月五日 同時刻


 侵入警告音の後、ボイラー室に侵入した人物をサラがカメラで追っていた。
 人物の名前はもうわかっている。あの東条海人だ。普通ならエマージェンシーコールを発生させ逮捕すべきだが、それをサラの権限でそっとオフにする。サラには一つのたくらみがあった。そしてそれは悪魔じみていた。
「ふふっ。彼がもし落下して死亡した場合、マーカーがひとつ余るわけね」
 誰もいない本部室で意味ありげに微笑む。
 そして赤いマニュキュアを塗った爪でキーボードを叩き、データをもう一度確認する。そこには一般男性が500メートルのハシゴを登るのはほぼ不可能に近いと計算結果が表示されていた。彼の無謀な挑戦は今のサラにとっては歓迎すべき事であり、またと無いチャンスでもあった。
「恋人に会いに行くためだけに命を懸ける……か。せっかく助かる命を捨てるとはバカな男ねえ」
 自分には到底理解できないという風に、頭を振った。
 海人が死亡した場合、生体組織ごと手に入れて夫を施設にねじこむつもりであった。近いうちに、あの脱出口はコンクリートで永遠に塞がれるのだから問題はない。施設内での資格者は完璧に保護されていて手が出せないが、外壁の外を登るというなのら話は別だ。
 煙草に火を着け冷たく微笑むと、自己中心的な『保険』を掛けるために指先を動かした。もし登りきっても〈心を折ってしまう〉悪魔の細工を施す。
 少しだけエンターキーを押す瞬間に戸惑いが見られたが、海人のゴール地点、つまり地上にある出口のフタに電子ロックをかけた。
 東条海人がそこで絶望し、力尽きて落下することを願いながら……。