小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
春本 美穂
春本 美穂
novelistID. 49342
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ミーシャの冒険 9

INDEX|1ページ/1ページ|

 
ミーシャの冒険 9


ミーシャの報告会は教会で行われた。
教会の呼集を知らせる鐘の音に、村人は漁も畑仕事も家事も野遊びも中断して白亜の教会に全員が集まった。
魔族は教会には入れないと村人は固く信じている。
ミーシャにべったりのフローラや壁の装飾を楽しげに見回っているエリカは村人の基準に照らせば魔族ではない、ということになるのだろう。
「さて、ミーシャ、森から少女を連れ帰ったと言うことは、よい知らせがあると言うことかな?」
「はい、よい知らせもあり、悪い知らせもあります」
「よい知らせとは?」
「この2人を保護して聞いたところ、アルビーナの行方の見当がついたという事です」
「そうか、で、悪い知らせとは?」
「アルビーナを連れ去ったのは魔族ではなく、街の連中です」
「なんだって!?」
詰めかけていた男衆がほぼ同時に叫んだ
「なぜ街の連中が少女を連れ去るのだ!?」
「皆さん!」
ミーシャはエリカを指差して
「この子、エリカこそが生き証人です」
指差されたエリカは向き直り、にっこりと微笑んだ。
文字通り花の微笑である。
高ぶっていた皆の心は、一瞬にして静められ、穏やかな空気が醸し出された。
「私はここからずっと、ずっと、遠く離れた村に住んでいます。
まだ草の葉が黄緑の頃に、お姉ちゃんと森の近くで薪を拾っていたら、大きな人が何人もやって来て、いきなり袋をかぶせられて担がれました。気が付くと固い乗り物に乗せられて、森の中をがたがたと走っているところでした。『学校に入れてやるんだから感謝しろ』と大きな人は言っていました。大きな人がそのうちに居眠りをして、乗り物が止まった時に飛び降りて、草の中に隠れました。どうしていいかわからずに、森の中をあるいていたら、ミーシャさんに拾われました」
まあ、よくすらすらと出てくるもんだ・・・
「今までずっと、森の中で迷っていたと言うことかな?」
神父は優しく問いかけた。
「はい、魔族の人達が寝る場所や食べる物をくれました」
「魔族が?」
「はい、魔族の人達はとても優しいです。本当です。でも、魔族の人達は森から離れられないので、お姉ちゃんを探しに行きたいと言ったら、ちょうど森に入ってきたミーシャさんと会えるようにしてくれたんです」
「街の連中が、お姉ちゃんを連れて行ったという事に間違いはないんだな?」
「はい、確かに街の学校に入れるって言っていました」
「街の学校って?」
「街の工場で働く人を作る場所みたいです」
教会の中はざわめいた。
街の連中は自分たちの工場で働かせるために年端もいかない少女をさらっているのか・・・
ざわめきがいらだちに変わるのに時間はかからない
ミーシャは危険を感じた。
「とにかく、街にある学校とやらからアルビーナを助け出す必要があります。それにはまず、連中の使っている森の道を逆に辿っていくのがいいと思います」
「人さらいをやっているような連中だ,素直には返すまい」
「森の道を使い続けていると言うことは、村人が魔族を恐れて入らないということ、つまり魔族のせいに出来るからです。だからまさか感付かれているとは思いますまい」
「隙があるはずだと?」
「はい、だから皆は実力で取り返すことが出来るように、武器や食糧を準備しておいて下さい。私はこの子達と森へ行って魔族の協力を取り付けてきます」
「魔族の!?」
「エリカが今まで親切にされたと言うことは、魔族とて連中の行いを良くは思っていないはずです。森での安全と便宜を頼めれば、救出が楽になると思いませんか?」
「私はミーシャが言うとおりだと思う」
フィオナが皆の前に進み出て
「現にミーシャは2人も連れ帰ったじゃない。これは魔族からの友好のメッセージだと思わない?」
村人は互いに顔を見合わせていたが、やがて納得したようにざわめきも収まった。
「ミーシャよ、魔族の協力を求めることを許す。ついでに学校とやらの様子を探れ」
神父からの承諾と指令をミーシャは得た。
ミーシャにまとわりつくフローラがにっこりと笑った。
作品名:ミーシャの冒険 9 作家名:春本 美穂