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世田谷東署おちこぼれ事件簿1-4

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「豪徳寺で開催されたイベントの時に起こった事なんですが」
「イベント、豪徳寺で・・・また招き猫のお祭りか何かか」
「いえ、歴史関係です」
「歴史・・・豪徳寺に関係のある歴史」
「はい、彦根と水戸のイベントです」
「こりゃまた随分と大掛かりだな」
 豪徳寺は代々彦根藩井伊家の菩提寺だ。あの幕末に起きた桜田門外の変で暗殺された大老井伊直弼の墓もある寺だ。あの桜門外の変で、井伊直弼を襲った刺客が元水戸藩と他に一名元薩摩藩の浪士達だった。
「そのいわば敵同士が何でイベントなんか一緒にしたんだ」
「和解のイベントです。彦根と水戸の遊び心と洒落の観光イベントだったそうです」
「そんなイベントに被害者がなんで参加したんだ」
「被害者の関孝三は関係者だったんです」
 被害者の関孝三は桜田門外の変で大老の井伊直弼を襲った水戸藩元浪士で襲撃時の首謀者だった関鉄之助の遠縁に当たる関係者だった。
「出身は水戸か、だから店に天狗のイラストを使っているのか」
「水戸の天狗党にも関係あるのですかね」
「トラブルの相手は誰なんだ」
「桜田門外で井伊直弼が暗殺された時に主君を守って死んだ家臣の末裔だそうです。名前は今井信一、都内在中の男です」
「恨むのは襲われて井伊家の家臣の方じゃないのか」
「それが襲った側の浪士達はその後捕らわれて打ち首になっているんです」
「鬼平さん歴史に詳しいな」
「歴史小説も好きでしたから・・・やっぱり現場で絡んでいったのは関孝三だったそうです」
「関のおやじはトラブルメーカーって事か・・・よし、収集敵と特捜さん絡みに、それに桜田門外と盛り沢山だがひとつひとつ調べるか」
「はい」

 被害者の関孝三について警視庁特捜部が内偵を進めていたのは、表の質屋業ではない裏で無許可で行なっているヤミ金融業だった。
 特捜部が調べたヤミ金融の客リストの中に、三軒茶屋駅前交番の立花巡査の言っていた容疑者の一人金田広司の名前もあった。

「あいつです金田広司」
「立花さんが言ってた通りタッパがありますね」
 山本刑事と純平は、容疑者金田広司が住職をしている寺の前に来ていた。
 容疑者の金田広司は調布市にある寺の住職であり、幼稚園や京王線仙川駅前で居酒屋とか駐車場なども運営しりと手広く商売をしていた。
「かなりのやり手ですね」
「なーに、内情は資金繰りにキューキューの様だ。銀行からは融資を断られているらしいし、ヤミ金融で借りるくらいだからな」
「見てください高そうな車が並んでますよ、フェラーリですよあれ」
 駐車場に外車が三台あった。
「よし話を聞きに行くか」
 山本刑事と純平は車をおりた。
 金田広司は三軒茶屋の関質店に行った事は認めたが、単に商売の事で話しに行っただけ、関孝三ともめた事などないと予想通り否定した。
「豪徳寺での関さんの事件なのですが」
「宗派が違いますから豪徳寺さんには行った事はありません」
 山本刑事はさりげなく事件の事を聞いてみたが、こちらも想定内の答えだった。
「足を怪我でもしたのですか」
 山本刑事は足を気にしているのに気付いて聞いてみた。
「庭で転んだだけです」
「所で牛丼はお好きですか」
「まあたべますが」
 犯行時間帯のアリバイについても聞いてみたが、その時間は下高井戸シネマで映画を観ていたと映画館の入場券の半券を左手で出した。

「アリバイありましたね」
「半券か、あんなものどうにでもなる。あの半券には日付だけで時間はなかった。奴さん待ってましたとばかり出しやがった。それにわざわざ半券を持っているのも怪しい。あんなもの普通はすぐに捨ててしまうだろ。後で使うためならとっておくがな。アリバイがあっても本ボシをあげるまでは疑惑が一%でも残っていれば疑ってかかれ」
「はい」
 二人は近所の聞き込みをした。金田広司は車好きで出掛ける時はいつも自分で運転して出掛けているとの事だった。

 取りあえず二人は次の容疑者に接触する為下北沢に移動した。
 京王井の頭線と小田急線の下北沢駅から少し離れた遊歩道沿いにある、関良子から聞いた招き猫の収集敵大井次郎の家に向かった。
「随分と大きな屋敷だな」
 山本刑事は邸宅を囲った塀の長さに目を見張った。
「近所では有名な資産家らしいです」
 大井次郎は下北沢駅周辺にいくつも貸ビルを所有している。下北沢駅周辺は再開発中で、街の中心になる予定の計画道路の建設場所に大井次郎が所有しているビルの一つがあり高額の立ち退き料が懐に入る事になっていた。
「金が金を吸い寄せるて事か」
「三千万や四千万なんかで危ない橋は渡らないかもしれませんね」
「いや、そう言う奴の方が金に固執するものだからな、金の恨みは根が深い、こいつも何をするか分からん」
「そう言うものですか」
「顔を拝んでみる事にするか」
 純平は大井次郎の邸宅の呼び鈴を押した。

1-5に続く