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学校外恋愛。

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第1章:いつも変わらない毎日

「行ってきまーす」
ぶっきらぼうに母にそう言うと、家から徒歩10分の最寄り駅まで向かい、電車に乗ったらすぐにスマホの電源を立ち上げて、メールチェック。

そんな風に、当たり前の様に毎日していることがある時いきなり、大きく変化する。この頃の私には想像もつかない事だ。

私の名前は三笠 陽夏(みかさ ようか)。県立高校に通うごく普通の高校1年生。田舎の地元の中学に通っている頃はそれなりに勉強して、学年で10位には入っていた。恋だってそれなりにした。中学の間に出来た彼氏は4人。私のようなクールな性格が良いとかなんとか、よく学年関係なく告白されてきた。告白されて何となく付き合おうと思ったのがその4人だ。
実際、私は周りが思うようにクールなんかじゃない。皆みたいに素の自分を隠して明るい自分を纏うのが嫌だったからだ。もちろん今もこの思いは変わらない。
高校1年生の11月のとある朝。
学校に向かう電車の中で、メールチェックを済ませると、私は今日の小テストの勉強をするために通学鞄からテキストを取り出した。



ガラガラー。
「おはよー陽夏ー」
クラスメイトからの朝の挨拶に笑顔で答えると、私は窓際、前から3番目の自分の席に着いた。
「はよ、三笠」
隣席の柏木 勇太(かしわぎ ゆうた)からの挨拶にも会釈で答え、私は鞄から一冊の文庫本を取り出した。
「お前ってさ、ホントにしゃべんねーよな、いや、つかクールな感じ?」
柏木君が机に頬杖をつき、真顔で言う。
「別に…。クールになろうとしてるんじゃないよ。明るい性格を纏うのが面倒なだけ」
私は、文庫本のページをめくり、ぽそりとつぶやいた。
「ふーん、もっと楽しめば良いのに」
柏木君はつまらなさそうに言うと、近くを通った男子生徒に話しかけた。

しばらくして。
「はーい、席に着いてー!」
チャイムが鳴り、担任が入って来た。
私は読んでいた文庫本を閉じると、机の中にしまった。
「えー、皆さん知ってるかな?今、この辺りに暴風注意報が出てるんです。もしかしたら、いつか警報が出ちゃうかもだけど、まぁ多分出ないよ!」
今年41歳のおじさん担任がアハハと笑う。
途端にクラスがどっと湧く。
「いよっしゃあ!警報来るかも!」
「帰って、寝直したい…」
「でも、注意報だろ?まだ分かんねーぞ?」
クラス中の生徒が話を始める。
そんな中で、私は1人ため息をついた。
『まだ、警報が出るって決まった訳じゃ無いのに…皆楽しそうだな』
心の中で呟いていると、肩をツンツンとつつかれた。後ろを振り返ると、困ったような笑顔の一木 舞由(いちき まゆ)が言った。
「まだ警報が出るって決まった訳じゃ無いのに、よく皆喜べるよね」
「そうだよね」
実を言うと、この舞由はなかなか気が会う子だ。お互い名前で呼んでいるし、私の考えにもよく頷いてくれる良い友達だ。
「はいはい!皆はしゃぎ過ぎです!出るとは決まって無いんだから、しっかり授業を受けること!」
こうして、一時間目が始まる前のショートホームルームが終了した。

授業は順調に進み、遂に昼休憩がやって来た。
「ふぅー。やっと終わったぁ!よし、陽夏!お弁当食べよっ?」
ルンルン顔の舞由が言った。
机を合わせて、2人でお弁当を囲む。
「にしてもさぁ、今日の英語の小テスト難しすぎじゃなかった!?あたし6点だった…」
卵焼きを頬張った舞由が言う。
「確かにね。でも、ちゃんとやっとけばある程度はとれるよ。私は9点だった…」
「9点って!10点満点で!逆に何を間違えたの?」
「慌て過ぎて、ピリオド書き忘れた」
「うっわーやっちゃったねぇ」
「あ、舞由。そろそろ予鈴鳴るよ?」
「あわわ。ひじき食べてないっ!」
舞由と過ごす時間は本当に楽しい。
この時だけは、私は明るい自分を纏おうか、などと考えてしまうのだ。
舞由との間には、壁を作りたくないから。
作品名:学校外恋愛。 作家名:爽子