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春本 美穂
春本 美穂
novelistID. 49342
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ミーシャの冒険 7

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ミーシャの冒険 7

「えー知らないよ」
食後の最後を飾るアントルメ、木イチゴが山盛りに載ったパンケーキをつまみながら西の神が言った。
「ちっちゃい女の子でしょ?」
「うん」
「そんな子がいたら退屈紛れに空を染めたり獲物を追って入ってきた猟師を追いかけ回してみたり山賊をかまったりしてないわよ」
「退屈してるもんねぇ」
闇姫はそう言うと、手をひらひらと振ってテーブルの上、料理には当たらない高さに3Dの地図を出現させた。
「ミーシャちゃんの村はここね」
どういう仕掛けになっているのか、指で示した位置が明るくなる。
「森に人間が入るのは、ミーシャちゃんの場合を除けばこの道かこの道なのよ、普通」
普通でなくて悪うございましたね・・・
「で、森の村側が草原になっているから、知られずに入り込むのは不可能なの」
「フローラがいるから?」
「無数にね。ミーシャちゃんにもずっとくっ着いてたでしょ?」
「フローラに気付かれないように入り込むのは?」
「川の中を魚のように上がってくれば出来るわよ」
それは、普通の人間には無理な話です・・・
「でもねぇ、ミーシャちゃん。私が言うのもなんだけど、魔物が棲む森なんかより、街の方が年頃の女子がいる可能性あると思わない?」
「街?」
「街と村をつなぐ道は、浜通りと山通りがあるの知ってる?」
「うん、普段は浜通りしか使っていないから、山通りは荒れ果ててる」
「あれ? ミーシャちゃんここに来る前に見てこなかったの?」
「ずっと道じゃないところ登ってた」
フローラが口を出した。
そして、ちらりとミーシャを見るとはにかんで視線をティーカップに落とした。
「そっかぁ。じゃあ、説明するね」
闇姫は立ち上がると
「産業革命っていっても、ミーシャちゃんにはさっぱりだよね・・・えっとね、木炭や石炭で走る乗り物が街にはあるの。」
「???」
「まあ、そのうち見ることになるから。でね、その乗り物が走りやすいように森の木を切りまくって砂利を敷いて隣街につなげているのよ」
「そ、そうなんだ」
「で、街では工業が盛んになって人手が足りなくなってきたの」
「ちょ、ちょっと、それはアルビーナ、いや、女の子とは何の関係も」
「関係あるかどうかは私も知らない。で、ミーシャちゃん、学校って知ってる?」
「えっと、神父になるための?」
「神学校じゃなくて、年端もいかない子供を集めて全員に教育をして、将来の工場の担い手にさせようって場所よ」
「そんな場所が?」
「あるの、街にね。そして、あちこちの村で騒ぎが起こるときには、なぜか街から乗り物がやってくるのよ」
「それじゃ、まるで・・・」
「私達は嘘は言わないわ。でも、答えは自分で見つけて」
それでは人がいなくなるのは魔物の仕業ではなく、街の連中の仕業、ということになる・・・

「あら、ミーシャちゃん、おねむ?」
考え事をしているうちに、うとうととしていたらしい。
「私達には必要ないけど、人間はちゃんと眠らないとね」
闇姫の声を聞いてフローラが椅子から立ち上がった。
そして、ミーシャの足もとに仰向けで寝転がった。
「どうぞ」
どうぞ?どうぞって??
「いいから、フローラの上へ寝てご覧なさい」
今度は西の神が冷やかすようにではなく、淡々と言った。
「上へ?」
「そう、上へ」
フローラがせがむように両手を差し出した。
「えっと、頭が下で、いいのかな?」
「お好きなように」
わけが分からないまま、仰向けに寝たフローラの膝に腰を下ろし、まるで抱きかかえられているように見えるだろうなと思いながら、ゆっくりと体重を預けた。
「あれ?」
今まで岩だったはずの場所がいつの間にか草に覆われて、地面にそのまま横たわった時のような痛みを感じない。
そうか、草原だ。

フローラの声を遠くで聞いたような気がした。
草原の花の優しい香りに包まれて・・・

いつの間にか眠りに落ちていた。

作品名:ミーシャの冒険 7 作家名:春本 美穂