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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 14

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第53章 危機、プロクスへの船出


 レムリアの町の北西部に、レムリアを統治する王の住む宮殿があった。
 レムリアの建物は民家ですら荘厳な造りをしているのにも関わらず、王宮はそれを圧倒的にしのぐほどの荘厳さがある。もはや城と呼んでも差し支えないほどに大きく、そして美しかった。
 美しさは内部も同様であった。広い空間にレムリアの力を象徴する水を湛える噴水があり、宮殿内の壁は思わずため息がででしまいそうな澄んだ水色のタイル張りであった。
 レムリア人の特徴である端麗な容姿のせいか、宮殿の使用人、ハウスメイドから警備兵、果ては料理人までどこぞの貴族なのではないかと思わされた。
「きれいな所だなぁ…」
 ロビンはふと洩らした。
 彼らはピカードに連れられ、このレムリアの宮殿へと来ていた。実の母親に先立たれ、一時は悲しみに暮れていたピカードであるが今はそんなそぶりを一切見せていない。何か強い決意を得たかのように迷いのない表情をしている。
「皆さんにはこの宮殿が綺麗に見えるんですね…」
 ピカードは意味深に言った。
「何を言ってるんだ、ピカード。とても美しい所ではないか」
 ガルシアが言う。
「そうだぜ、オレだってこんなに綺麗な所に来たのは初めてだぜ」
 シンも続く。
「…確かに初めてここへ来た人にはこの宮殿に限らずレムリアそのものが美しく見えてしまうかも知れませんね」
「レムリアは想像した以上にすばらしい所じゃ、ピカードはそうは思わんのか?」
 スクレータは訊ねた。
「昔、五十年前の話でしょうか、レムリアは今とは比べものにならないくらいに栄えていました」
 ピカードが言うにはこれほどまでに美しいレムリアが廃れてしまっているのだという。その原因はポセイドンによる力の吸収が一つであるがそれ以外にも原因があった。
 エレメンタルの減少である。かつてはレムリアは水のエレメンタルに満ちていたのだが、今は減少傾向にある。レムリアはエレメンタルの灯台が消えるより遙か昔から存在している。灯火が消え、世界からはエナジーが無くなってしまった。しかしレムリアはハイディアやプロクス同様エレメンタルの加護を受けた場所であり、民は皆エナジストである。
 そんなエレメンタルの加護を受けた地であるが故に昨今の灯台解放の影響を受け力のバランスが崩れてしまい、今レムリアは荒廃の道を歩んでいた。しかしそれはレムリアのみにとどまる問題ではなくなっていた。
 それからピカードに連れられしばらく歩くと、ロビン達は大きな扉の前へとたどり着いた。
「この先がハイドロ様のいらっしゃる謁見の間です。レムリアの王様なので絶対に失礼の無いようにしてくださいよ」
 ピカードは全員に向けて話したが、その視線は少々ある二人に偏っていたように思われた。
「おいおい、いくら何でもひどすぎやしないか?こいつと一緒にするなんて」
 シンが口を尖らせた。
「おい待てよ、何でオレを指さすんだ?」
 ジェラルドは抗議する。
「だってお前以外騒ぎを起こしそうなのは他にいねぇだろ」
「なんだと!」
 シンとジェラルドは口げんかをし始めた。
「やめてください、二人とも」
 ピカードは二人をたしなめた。それでも二人は言い争いをやめようとしなかった。
「ピカード、この二人は置いてったら?」
 シバが提案した。ピカードはそれしかないのか、とため息をついた。その時だった。
「ハイドロ、貴様は間違っておる!」
 シン達のたわいもない口げんかなど非常にかわいく思えるほどの男の怒鳴り声が、ハイドロ王のいる部屋より響いた。そこにいた全員が驚き、二人もけんかをやめていた。
「何だ、今の声は!?」
 ロビンは驚いた表情で言った。
「この声、コンサバト様?」
 この独特の怒鳴り声には聞き覚えがあった。
 レムリアでもエレメンタルの灯台についてはしばしば議論がなされており、解放派、保守派と派閥ができていた。解放派を取り仕切るのがレムリアの王であるハイドロであり、保守派の長が怒鳴り声の主、コンサバトである。レムリアでは保守派の集まりをコングレスと呼ばれている。
 以前はこれほどまで激しい議論がなされることはなかったが、最近になって最早議論を通り越し、コンサバトの一方的な罵倒が行われるようになっていた。そして、今そのまっただ中であった。
「灯台を解放すれば錬金術が復活し、それを悪用せんとする者による争いが起こる。ハイドロよ、貴様それを分かって解放しようなどと申しておるのか!?」
「コンサバト、私はある確証の元で解放しようと考えておるのだ。お前のように短絡的な考えで事を運ぼうとしている訳ではないのだ」
 ハイドロは言った。
「短絡的?貴様今短絡的と申したな!」
「事実を述べたまでよ…」
「貴様…!」
「まあまあ、お二人ともそろそろ落ち着いたくださいよ」
 ハイドロとコンサバトの間にいた男が苦笑しながら二人を止めようとした。
「ルンパ、若造は黙っておれ!」
 ルンパと呼ばれた男にコンサバトの怒りの矛先が向いた。
「ルンパにたしなめられるのだ、お主は十分短絡的だ」
 ハイドロはコンサバトとは対照的に落ち着いている。
「ぬぬぬ…」
 コンサバトは怒りのあまり言葉を失った。
「お取り込みの途中失礼いたします」
 ふと、謁見の間の扉が静かに開き、男女数名のグループが入ってきた。
「おお、ピカードではないか」
「お久しぶりです、ハイドロ様、コンサバト様」
 ピカードは部屋にはいると礼儀正しく挨拶をした。
「ピカード、ふん!島を出て外界に行った不届き者か」
 コンサバトはピカードにも悪態をつく。
「不届き者などではない。私が直々に命を下し、合法的に出たのだ。軽口をたたくでない!」
 初めてハイドロが怒鳴り声をあげた。
「ちょっとハイドロ様まで…、全く、仕方ねえなあ」
 ルンパはくしゃくしゃの後頭部を掻きながら言った。
「ルンパさん、もう来ていたんですね」
 ピカードは言った。存外早くルンパはたどり着いていた。
 ルンパによると、ウィズルの伝書鳩から手紙を受け取ると、まずピカードが帰ってきたことに大層驚いたという。そしてすぐさまこの宮殿へとやってきた。そしてここへ来てみるともうすでにハイドロ達の言い争いは始まっていたのだという。
「ピカードよぅ、この度はご愁傷様だったなぁ」
 ルンパはピカードを哀れんだ。
「お悔やみの言葉、ありがとうございます。でも僕は立ち止まっている暇はないんです」
 ピカードは強くなった、ルンパはそう思うのだった。母親が死んだ直後だというのに自らに貸せられた使命を果たそうとしている。
「ちょっと待っててな、今ハイドロ様達のケンカを止めるからよ」
 ルンパはニヤリとした。
「お二人さん、そろそろ落ち着きなせぇ。ピカードが来てるんですぜ?」
 ハイドロははっとした。
「そうであったな、コンサバトなどと争っている場合ではない…」
「コンサバトなどとは、とは何じゃ!」
「まあまあ、コンサバトさん。あんまり興奮していると禿がますます進みますよ」
 ルンパは痛いところをつく。
「か、関係なかろう、それとこれとは」