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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 前覇王と正室の間に生まれた覇王家出身であり、当然自分こそ四国の次の覇王と思っていた彼に、末弟・清雅の王らしくない行動は遠く離れいても知っていた。
 お互い、初めから兄弟の情はなかったが、蒼剣が清雅の手にあると知ってその憎悪は、もはや修復不可能になっていた。
 蒼剣は、自ら主を選ぶ。そしてその主が死す時、次なる主を求めて彷徨う。
 清雅が死ねば、蒼剣は自分のもの。黒王、黒狼はそう考えているのだ。
 彼だけではない。覇王になれるのは何も覇王家の血筋だけとは限らない。蒼剣は身分を問わない。清雅が父を覇王に持ちながら、母は平民出身で、彼自身野育ちである。
 その蒼剣が清雅から離れれば、天下欲しさに群がる人間は少なくはない。
 この時は未だ、蒼剣の本当の力は発動していなかった。それが何を意味するのか。
 蒼剣は、使い手に清雅を選んだが覇王ではない、と云う事である。
 天を裂くという力は、覇王でなければ発動しない。
 そんな、清雅の元に今集う者がいる。
 七年前、四散した精鋭。蒼龍、白虎、玄武、朱雀___覇王に従う四武将。その名を四獣聖(しじゅうせい)。
 清雅はその四獣聖の一人・蒼龍(そうりゅう)であり、白虎と呼ばれる王城での王の側近も、四獣聖の一人であった。
 「お待ちしておりました、蒼王陛下」
 口から上を仮面で隠した蒼国宰相である瑠邑(るおう)が、恭しく彼を迎え玉座へと勧める。
 「ここでいい」
 そういって、どかりと玉座への階段に腰を下ろした清雅に、瑠邑は何も云わず議事を始める。
 四国の情勢が厳しくなっている事、黒抄、白碧の動き。
 その目が、清雅に向けられている事。
 「暫く来ないうちに、とんでもない事になってない?セイちゃん」
 清雅がさっきまで寛いでいた樹の枝で、赤い髪の青年が笑っている。
 今、この四国で何かが大きく動き出す。
 再び、一つになるために。
 そして、清雅の運命も再び大きく揺れることになるのであった。