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八峰零時のハジマリ物語 【第二章 014】

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  【014】


《さて……そろそろ話を聞かせてくれないかなのだぞ、利恵》
「マ、マリア……」

「丘の上公園」の帰り道、舞園利恵は家路へと辿る中、マリアから問い詰められていた。
《利恵……どうして零時やシッダールタ様の前で、そんな『一般生徒のフリ』をしているのだぞ?》
「そ、それは……」
 舞園利恵は、少し話すことをためらっていた。
《一つ言っておくが、ウソをついても無駄だからなのだぞ~》
 そう、マリアは少し脅しっぽい表現をした。
「わ、わかってる……ちゃんと話すけど、零時くんには黙っててくれない?」
《……事と次第によるのだぞ~。とりあえず話してくれなのだぞ~》
「そう……そうよね。隠し通せるものではない、よね」
《そうだぞ……それは無駄なのだぞ~》
「わかったわ……」
 そう言うと、マリアは覚悟して話を始めた。

「わたしは、たしかに『秦氏学園』には『人間界を守護する者』の養成目的で入学した生徒だけど、その辺は話したよね?」
《ああ。最初、利恵の身体に入ったときにお前のことは教えてもらったからな》
「うん……わたしの父、『舞園李園(まいぞのりえん)』『舞園』の家系は元来、『人間界を守護する者』の家系。だから、父も、その父の父も同じようにこの『秦氏学園』の卒業生だった。でも、そんなことを零時くんに話していいのかどうか迷っちゃったの?」
《どうしてなのだぞ?》
「もし、そんなこと零時くんに言ってしまったら嫌われるんじゃないかって……」
《利恵……》
「こんな……オカルトな話をしたら零時くんが気持ち悪がるんじゃないかって……」
《……そうか。まあ、言いにくいことではあるからなのだぞ~》
「実はわたし、ずっと昔から零時くんのこと知っててさ……零時くんは忘れているみたいだけど、今から11年前、幼稚園の頃だけど、そのとき、わたしは零時くんと出会った。でも、わたしは人見知りが激しい子供だったから、周りの子となじめなかったの。でも、そんなとき、そんなわたしに声をかけてくれたのが『零時くん』なの」
《へえ……やるじゃないか、零時のくせになのだぞ》
「くすっ。……そうして幼稚園では零時くんがわたしが一人になっているときは気を遣ってよく話かけてくれてたんだけど、あるとき、幼稚園の遠足で山に行ったときわたし迷子になったの。どんどん日が暮れていって、わたしは怖くなって森で一人で泣きながらうずくまっていたんだけど、そんなとき零時くんがわたしのことを最初にみつけてくれたの」
《へぇ~》
「そして、一緒にみんなのいる山小屋まで行って、それで一緒に怒られてくれたの」
《?……どうして零時も怒られたんだ?》
「零時くんはわたしが居なくなっていることに最初に気づいたみたいで、その時、先生たちに連絡もしないで一人でわたしのこと探しに行ったみたいなの。だから、結果的にはわたしと零時くん、二人が『行方不明状態』だったみたい」
《バカだな~零時は。本当にバカなのだぞ~》
 と言ってはいるものの、マリアの顔は少し満足気だった。

「ふふ……。でもね、わたしはとても嬉しかったの。まあ、迷子になったわたしが原因で零時くんに心配かけてしまったからこんなことになったのは申し訳ないのだけれど……でも、わたしにとってはこの時のことは零時くんとの『大事な思い出』なの」
《……そうだったのかなのだぞ》
「うん。でも、その後、小学校に上がったら、零時くんとはクラスも別々になって、会う機会もどんどん無くなっていったの。しかも、中学校は零時くんとは違う学校になって……それで、もう会うこともないと思ってた」
《……利恵》
「そして、高校生になってわたしは父の家系の者として『私立秦氏学園』に入学することになった。そして、入学式の日、わたしはこの学園で零時くんをみつけた」
《……》
「わたしね、『高校生活』は全く期待してなかったの。だって、高校生活は『父の家系のため』に行くようなものだったから。だから、そんな場所に零時くんを見かけたときはすごくビックリしたの。でも、同時に舞い上がったわ……『また零時くんに会えた』って」
《そうか……そりゃ嬉しいのだぞ~》
「うん。でも、零時くんとは幼稚園の頃以来だったから、わたしのこと覚えているかどうかわからないから……話し掛けるのがすごく怖くて……そんなときにマリアがやってきて、零時くんの話をしたからビックリしたの」
《なるほど、そうだったのかなのだぞ~。だから利恵はわたしの作戦にノリノリだったのかなのだぞ~》
「ふふ、そういうこと……それにしても、マリア、どうしてあんな『零時くんに隠すようなこと』したの?」
《隠す? 何がなのだぞ~?》
「だって……『零時くんと接触するよう』指示したのはマリア……あなたじゃない。しかも、わたしはマリアのことは知らないという体で零時くんに接触してって……あれはどうしてなの? 別に零時くんの中にいるシッダールタさんは同じ天界の仲間なんだから、そんなことする必要ないんじゃ……」
《あれは、そうやって利恵に接触してもらうことで、零時の中にいる者が本当にシッダールタ様かどうかを判断できるからそういう指示をしたのだぞ~》
「本当に……それだけ?」
《どういうことなのだぞ?》
「わたし……何となくだけど、マリアとシッダールタさんはまだ『何かを隠している』ように見えてならないの。しかも、それはわたしのことではなく……零時くんに対して」
《……利恵》
 マリアは舞園利恵をずっとみつめていた。そして舞園利恵もまたマリアを同じようにみつめていた。
《……ふっ、さすがなのだぞ、利恵。さすが『舞園』の家系だけはあるのだぞ》
「じゃ、じゃあ……」
《うむ。たしかにわたしとシッダールタ様は零時に対して隠していることはある。だが、それは零時をすぐにどうこうするものでもないし、零時をどうにかするということでもない。心配しなくていいのだぞ》
「ほ、本当?」
《ああ、本当なのだぞ。ただ、零時にはその秘密を伝えるには『タイミング』が必要なのだぞ。だから、今は理恵も一緒に協力して欲しいなのだぞ。それは『零時のため』でもある》
「零時くんの……ため?」
《ああ。もしこの秘密が漏れたり、零時が不審がることがあると、天界や人間界にとってあまりよろしくない方向に行きかねないのだぞ。なので、利恵頼む……一緒に協力して欲しいのだぞ~》
 そう言うマリアの必死さは、利恵に想念として伝わっていた。
「わ、わかった……それが本当に零時くんのための秘密であるのなら……わたしも協力する」
《ありがとう、利恵。すごく助かるのだぞ~。そのためにも一刻も早くアマテラス様をみつけることは大事なのだぞ~》
「それって……零時くんの秘密に関わることなの?」
《そうなのだぞ~。アマテラス様とシッダールタ様が揃えば『零時の秘密』についてもすべてわかることになるのだぞ。ちなみに『零時の秘密』についてはわたしとシッダールタ様も半信半疑なところがあるのだぞ》
「えっ? そうなの?」
《ああ……だからアマテラス様をできるだけはやく見つける必要があるのだぞ、わかったか利恵?》