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漢字一文字の旅  第三巻

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十四の六  【動】



【動】、左部は「重」、だが元は「童」(わらべ)。
これに「力」を添えて、農耕に従事することであり、身体を動かす意味となったとか。

こんな【動】、胸も動悸を打つ。
この状態が「ドキドキ」、どうも「動悸動悸」が語源のようだ。

恋人を見ればドキドキする。
その時脳内ではドーパミンがドバッと放出されていると、今回神戸の理化学研究所が解明した。
そして、その状態はまさに――ときめき。

この「ときめき」という言葉、今から1,000年前の平安時代中期に、清少納言が枕草子で初めて使った。

心ときめきするもの。
雀の子飼ひ。
乳児遊ばする所の前わたる。
よき薫物たきて、一人臥したる。
唐鏡(からかがみ)の、少し暗き見たる。
よき男(をとこ)の、車とどめて、案内(あない)し、問はせたる。
頭(かしら)洗ひ、化粧(けさう)じて、香(こう)ばしうしみたる衣など着たる。
ことに見る人なき所にても、心のうちは、なほいとをかし。
待つ人などのある夜、雨の音、風の吹きゆるがすも、ふとおどろかる。

どうも清少納言は8つのことに、ときめいたようだ。折角だから現代文にてハッキリさせてみよう。
1.雀の子を飼うこと。
2.赤ん坊を遊ばせてる前を通ること。
3.高級な香を焚いて、一人横になってる時。
4.唐製の鏡の、ちょっと暗くなってるところを覗いた時。
5.高貴そうな男が家の前に車を止め、使いの者に何かを聞かせにやった時。
6.髪を洗い、化粧して、良い香りが焚き染められた着物を着た時。
7.その時には特別に見ている人がいなくても、心が浮き立ってくる。
8.男を待ってる夜、雨の音や風が建物を揺らがす音さえも、もう男が来たのだろうかと胸がときめく。

これが1,000年前の女性の「ときめき」だったのだろう。

しかし、この「ときめき」には漢字がない。一般的には「動悸めき」と言われてるが、他に次のようなものがある。

「時めき」 : 源氏物語桐壺に、「すぐれて時めき給ふありけり」とある。
他に「瞬芽希」に、色合いが美しいから「朱鷺めき」だとかが。

しかし、1993年、矢沢永吉さんは歌った。「心花よ」と。
この「心花」を「ときめき」と読ませた。
なるほど、うまく漢字を当てたものだと感心するしかない。

事ほど左様に、【動】は肉体的な動きだけでなく、「心」も動かす漢字なのだ。