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漢字一文字の旅  第三巻

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十五の三  【蘇】



【蘇】の草冠の下の部は魚の頭部に小さな木を添える形だとか。そこから魚を生き返らせる、生気を保たせる意味ということのようだ。
そこから「よみがえる」の意味になったとか。

また、【蘇】の読みは(ソ、しそ、よみがえる)。
この中の(しそ)は「紫蘇」で、中国原産の芳香ある一年草、お馴染みだ。

そして正月に飲むのが「屠蘇」(とそ)。
1年の邪気を払い、寿命が延びることを願って、酒に浸して飲む薬の名。

他にこの【蘇】、8〜10世紀の飛鳥時代に作られていたチーズのことを言う。

春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙(しろたへ)の 衣(ころも)ほすてふ 天(あま)の香具山(かぐやま) 

これは有名な百人一首。
この天香具山の南側の典薬寮(てんやくりょう)の乳牛院(にゅうぎゅういん)で【蘇】は生産されていた。
そして現代において、みるく工房という会社が試行錯誤の末に古代チーズ・飛鳥の蘇を蘇らせたとか。

飛鳥時代の貴婦人が好んだ味だそうな。

君待つと 我が恋ひ居れば 我が宿の 簾動かし 秋の風吹く
これは絶世の美人の額田王(ぬかたのおおきみ)が近江天皇を恋焦がれ歌った歌。
実に切な過ぎる。
そこで我慢できず、【蘇】を囓った、いや、囓らなかった……とかの噂がある。

ということで、飛鳥時代の女王であり歌人を謹んで偲び、一度味わってみたいものだ。