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おかしな家(7/3編集)

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「うし、じゃあ次はオレの番だなー。これ、ものすごい怖いから覚悟しとけ。ちょっと前のことになるんだけどさー……」

 厚澤拓也(あつざわ・たくや)がまだ宅配便の新人アルバイトだった時の話だ。とある一軒家へ小包を届けに行った。その家は、一風変わっていた。
立方体というのか、それよりもきちっとした真四角で、壁が全部真っ黒だった。窓とかも全然なくて、建物というより巨大な箱に見えなくもない。ドアまで近付いたら、もっと変だと思った。インターホンやドアノブも真っ黒なのだ。何もかも、黒色以外のものが見つからなかった。
 拓也はインターホンを鳴らした。

「どうぞ」

 女性と思われる、人か機械か迷うような声がした途端、ドアが自動で開いた。中に入ったらドアがバタン! と閉まった。拓也が押さえていなかったから当然だ。焦って見回した、その家の中。内装もかなり変わっていた。
例えるならば遊園地にあるアトラクションの一つ、ミラーハウス。それと同じだったのだ。
 全て鏡張りで、どこもかしこも拓也自身が映っていて、それでも普通の家みたいにドアや靴箱があった。電灯だけはなかった。上を見ても、電球だけなかった。そこで何だかおかしいと拓也は違和感を覚えた。しかし答えは辿り着かない。あまり奥の方まで入ったら怒られるかもしれないが、開けてくれなきゃ出られない。他の部屋とかもやっぱ鏡なのか気になって、中に進んだ。
 そうしたら、リビングもキッチンもやっぱり鏡張りだった。水道やコンロも、全部鏡で出来ている。拓也は凄まじくこだわっていると感心した。でもこれじゃ火は起こせないよなーとも。何せ鏡なわけだから。眩しいくらいだった。冷蔵庫も開けみたが、全く冷気はない。鏡で出来ているからというか、電気は引いておなかったのだろう。中も空っぽだった。冷蔵庫の中全ての鏡に、自分の顔が映っていた。ミニ・ミラーハウスというのが拓也の感想だった。他の部屋もいろいろ見て回ったが、鏡張りというか鏡でできているということ以外、何もおかしいところはなかった。
 そして、一番奥の部屋に入ろうとしたところで――やっと先程の違和感に気付けた。確かに、この家は壁も置いてある物も余すことなく鏡になっていて、最初は拓也もその通りに受け取っていた。
 でも。この家の中に、窓がない。電気だってどこの部屋もついていなかった。『光』がないのなら、鏡ばかりあっても、自分が映るわけがない。いや、その前に周りがすぐ見えるはずがないのだ!
 そう気づいた瞬間、慌ててその家を飛び出た。そうしたら、耳元で低い舌打ちが聞こえた。それも無視して全力疾走した。その後、仕事場に戻ってもう一回住所を調べた。でも、そんな家は存在しなかった。もう一度その家があった付近に行ってみたが、がらんとしたただの空き地があるだけ。

「全然ワケ分かんねー。あ、荷物? 荷台になかったから、たぶんあの家に置いてきたんだと思う。あのとき、もし、違和感に気づかなくって、最後の一部屋に入ってたら。オレ、あの家に食われてたかもしんねー」

 ……あのとき聞こえた舌打ちは、今までに『取り込まれた』ヤツらの舌打ちだったのかもなぁと、拓也は話を締め括った。
作品名:おかしな家(7/3編集) 作家名:狂言巡