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正しいフォークボールの投げ方

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 そうこうしていると話しを終えた三人がこっちへと近付いてくるのを、沙希が気が付いて声をあげる。だが、監督は反対方向へと歩いていくのが見えた。

 その行動にヒロは大きく落ち込んでしまった。一番偉い人がそっぽを向いて、どっかに行ったということは……。

 肩をガックリと落としているヒロの前に、あの優しい目の男性が立った。

「えーと、こういうのは本来、監督とかキャプテンが言うのが良いんだけど、監督は用事でさっさと帰ってしまってな」

 申し訳なさそうに言うと、気を取り直して真面目な表情でヒロを見つめると、優しい目の男性は自分の右手をヒロの前に差し出した。

 そして、一言。

「おめでとう」

「へっ?」

「テストは合格だ。今日からお前さん……モトスギくんは野球部だ!」

 自分が思っていた正反対の言葉にヒロは呆然となり、開いた口が塞がらない。そうしていると沙希が拍手をして、

「おめでとう、モトスギくん!」

 祝福の言葉を述べてくれた。ここで、ヒロはハッキリと理解したのである。

「受かった、ということですか?」

「ああ、そうだ」

 優しい目の男性は、より優しい表情で差し出していた手でヒロの手を取り、強く握った。

「期待しているよ。これから宜しくな!」

 その言葉がヒロの耳に響き渡る。しかし、未だ信じられない。たった、あれだけ……三球しか投げていないのに。完璧なる野球の素人が合格した事が理解出来なかった。

 愕然としたヒロの代わりに、宙に浮いていた野球の神様が胸を撫で下ろし、ニッコリと喜んでいた。

『まず第一関門は、オッケーイ! ってことかしらね。でもフォークボールで、あんなに驚いて……。もしかして、この世界って……』

 この異世界について思考を巡らせていると、いつの間にか降っていた雨が弱くなり、遠くの雲の切れ間から光が差し込んでいた。しかし、ヒロの心は晴れてはいなかった。合格したものの、野球は素人である。そして此処は、自分が居た世界とは別の世界。他にも様々な不安要素があり、これからの先を考えると不安でしかなかった。

「そう言えば自己紹介がまだだったな。オレの名前は、イナオ和久。三年で副キャプテンを務めている。ところで、モトスギくんは何年何組なんだい?」

「え、あ、それは……」

 早速、不安である要素の一つを突っついてきた。

 言葉に詰まるヒロ。なぜなら自分はここの学生……元より、この世界の住人ではないからだ。戸籍すら当然ながら存在しないだろう。自分が何者なのか証明するモノが無い。

 迷いに迷う。だけど、迷っている時間は無い。沈黙が続けば怪しまれてしまう。苦悩するヒロが捻り出した言葉は――

「じ、じつは……転校生なんです」