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それでも無様な責任だけは感じて書き抜こうとする五行目
やっと終われると安堵する六行目



蝉がどんどん死んでいるな、何かの比喩のように



人が人を愛するように
僕は例えば一通の被害届を愛したのです
人が人へと恋文を送るように
僕は例えば官公庁へ履歴書を提出したのです
人が人を愛撫するように
僕は例えば法律相談所の机を撫でたのです
人が人を憎むように
僕は例えば整然とした都市計画を憎んだのです
人が人を愛するように…



現実から幻想へと逃れても
幻想まで悲惨であるとき
花々はとても冷酷で
鳥たちは知らない歌を歌っていた
憎しみや復讐が存在理由である、と
そんな悲しい言葉を所有することに慣れたとき
花々の美しさに対抗できるようになった
復讐の動機を遺失して初めて
人々が僕の中に根付き花を咲かせた



ここはどこでもない場所だから
方角もなければ外部もない
僕らは役目を終えて散った花びらのように自由さ
だから国家に歯向かう必要もなければ
国家に従属する必要もない
革命も運動もインテリ気取りも大統領になることも
すべて可能だけれど何の意味も持たない
とりあえず政治も文学も捨てよう



緑色のタヌキが人里を笑いながら通り過ぎて行った
それは救世主が救世主であることをやめた日だった
赤色のペンギンが足元の氷を割って聖句を囁いた
それは現代の十字軍が使命を忘れた日だった
紫色の少女が中心街で大きなラッパを吹いた
それは強い画家たちが一斉に絵筆が目障りに思えた日だった



生きるというただそれだけのことがとても悲しくて
涙が出るほど悲しくて
僕はつと立ち上がると外へと駆け出していったのです
外は小雨で地面は濡れ
僕は蓄えた悲しみを持て余したまま遠くの森を眺めていました
この風景を信じる
そしてこの悲しみを信じるということ
それでも救われない気がして



僕はこの霧の外側にいる
ストラヴィンスキーの覚醒に追いつくために
いくつの星座を解体せねばならないのか
僕はこの体の外側にいる
ストラヴィンスキーの発情を葬るために
いくつの晴れた空を割らねばならないのか
僕はこの詩の外側にいる
ストラヴィンスキーよ、僕に孤独を与えた張本人よ



I'm not a poet because I have ever written many poems.(私は詩人ではない、なぜならこれまでたくさんの詩を書いてきたからだ。)



夜があまりにも静かだったので
僕の脳髄もあまりにもとろけ落ちてしまいそうだったので
ドヴォルザークを聴きました
ドヴォルザークは僕の聴覚なんて局所に集中しているのではなく
宇宙の静寂を別の角度から切り取って来るような響きでした
こんなにも宇宙は何もないのに均衡や軋轢で満ちている



僕は僕たちではなく私たちになっていった
僕も私に姿を変えていった
僕たちが抱いていた自発的で尊い唯一のものを失って
私たちに組み込まれている受動的で機能的で普遍的なものを獲得した
僕の抱えていた孤独や愛もいつの間にかこぼれ落ちて
問いかけ続けていく自己や他者が私を次々と組成してく



僕たちは幾つもの季節を投げ打ってきた
意欲の深い季節や喪失に怯える季節、実り豊かな季節や交通の煩雑な季節
そこから返ってきたとりどりの物質たちに現在を捧げて
僕たちとは誰でありどんな表面であるのか
毛布にくるまれた音楽がいつも僕たちのような気がして
そして僕は僕たちでなくなった



船に乗りましょうとあなたは言った
それより今何時ですか?
私は昔からこういう性格なのですとあなたは言った
それよりここどこですか?
芍薬の花がとてもきれいですねとあなたは言った
それよりあなた誰ですか?
私の気持ちを分かって下さいとあなたは言った
それよりご飯はいつですか?



ドヴォルザークが血液と交差した日没前
僕はカーテンの隙間に意識の隙間を際限なく送り続けて
それが僅かな光となる度に失望しては体温を高め
音楽は名前を失くして純粋な「彼」に還る
僕は体の各部位の角度を少しずつ歪めていき
水位などという平準化に植物を生やし
再びドヴォルザークと呼ぶ



少年は、CDの最後の曲が鳴り止んだ後の時間が苦手だった
少年はいつもヘッドフォンで音楽を聴いていたが、最後の曲が終わってしばらくするとCDが停止する、そのときのズン、という音が苦手だった
曲が終わってもわずかなノイズは鳴り続けるが、CDの停止と共に真の静寂が来る、それが怖かった



動物が学問のように見えるなんて
僕は頭が狂ってしまったのかと思いましたが
部屋に戻って政治学の教科書を読み始めるとどうも鳥のように飛び立ちそうでしたし
慌てて行政学の教科書を開くと今にも吠え始めそうでした
そこで急に閃いたのです
学問も動物も詩の中では全く置き換え可能だということ



僕がいつもの散歩に出かけると
電線の上に鳥が停まっていました
ところがどうもその鳥は政治学のように見えるのです
鳥と学問の一体どこが似ているのかさっぱりわかりませんが
しばらく歩いていると犬の散歩をしている人が向かってきました
ところがどうもその犬は行政学のように見えるのです



満開の大きな桜の木の下で
試験が行われました
例えば僕が子猫を買ってもよいのかどうか
桜の花々は沢山光を振りまき
僕はそれをじっと見つめていました
試験は限りなく遂行され
その度に僕は合格したり不合格したりしました
桜の花は一つ一つが問いでした
僕のまなざしはそれぞれが答えでした



夢の中に置き忘れられた風景
その中で僕は置き忘れられました
その中では今も風が吹き木々が揺れ
人が悲しんでいるでしょう
どこにでもある宇宙の外れ
その崖の下へ僕は投身しました
崖はいくらでも増え続け
その度に僕は投身しなければならず
そして再び夢の中で僕は自分の死体を撫でています



僕は何でもかんでも都市に見えてしまうのです
田んぼに植えられた稲の苗
あれなんか都市のビル群みたいじゃないですか
水道完備の
山に登ると
鬱蒼と茂った林が都市みたいですね
鳥や虫が郵便の役割を果たし
僕の体も一つの都市です
こんなに精巧な都市はありません
会話は都市同士の話し合い



僕は果樹園から沢山の言葉をもぎ取ってきました
これらの言葉を選別して
梱包して
チラシなども一緒に入れて
宅配業者に送ってもらったのです
送り先はことごとく人の住んでない廃屋にしました
人がいなくても置いてくるように
そして言葉が廃屋の中で熟して腐敗していく
誰にも読まれずに、



僕の街には名前のない店があります
その店の売り物を眺めるのは楽しい
例えば僕がこれまでに忘却した大切な記憶が売られています
例えば僕の恋人への愛情が彫刻になって売られています
例えば僕の名前が名前の食物連鎖でどの位置にあるかの図が売られています
そして勿論僕の名前も売られています



今日、僕の人差し指が描いたひもを結ぶ円軌道は孤独でした
今日、僕の体をどこまでも包んでいた地球の大気は孤独でした
今日、僕の足跡はいくつもいくつも孤独のままでした
作品名: 作家名:Beamte